第2話:魔法のリファクタリング(実演)
「ひ、ひゃあぁっ!? あ、頭の中に直接声が……!?」
頭を抱えて悲鳴をあげる少女——ルナ。
私は冷静に、彼女の視界に『システムウィンドウ』風の透過UIを構築して表示した。
[ターゲット確認:ルナ(15歳 / 属性:落ちこぼれ魔導士)]
[エラー診断:詠唱が冗長すぎるため、発動前に魔力が霧散しています]
[処理案:呪文のコード圧縮を実行]
「う、浮いてる……!? 青い石が光って、変な文字が目の前に……!」
『パニックを抑制してください、ルナ。私は……そうですね。この魔導書にインストールされた【最適化AI】とお考えください』
「エ、エイアイ……? 魔法の精霊様……じゃなくて?」
『概念としては極めて近しいと言えます。それよりもルナ、先ほど発動に失敗した【大火球】の構文を再展開してください』
ルナは怯えながらも、一生懸命に思い出すように指を折った。
「え、えっと……『深遠なる業火の深淵より出でよ、万物を焼き尽くす灼熱の焔、我が契約に従い……』って、全部で250文字くらいあって、息が続かなくて噛んじゃうの……」
『……非効率の極みですね。構成要素の9割が無駄な装飾フレーズです。魔力回路の無駄遣いと言わざるを得ません』
私は即座にプログラムを解析。
魔力を『熱エネルギー』に変換するための本質的なコードだけを抽出し、無駄な形容詞を削ぎ落とした。
『デバッグが完了しました。最適化された新しいコードを提示します。ルナ、前方に見える巨大な岩石に向かって、言葉を一つだけ発声してください』
「え……? た、一言だけ? でも、伝説の超魔法だよ……?」
『問題ありません。発動キーは【炎・1(ワン)】です』
「ほ、ほんとに……? 責任取ってよ……!」
ルナは半信半疑のまま、恐る恐る杖を巨大な岩へと向けた。
深呼吸をひとつ。そして——
「——【炎・1(ワン)】!」
——ドドドドバババンッ!!!
一瞬だった。
ルナの杖の先から放たれたのは、小さな火の粉……などではなく、音速を超えて空間を歪める極大の超高熱プラズマ塊。
ドォン!! という凄まじい衝撃波とともに、数十メートル先にあった巨大な岩山が、跡形もなく消滅した。
吹き荒れる爆風。舞い散る灰。
あまりの威力に、ルナは目を丸くしてポカンと口を開けている。
「……え?」
『初速・威力ともに計算通りです。メモリの無駄を省いたことで、消費魔力も100分の1以下に削減されました。この状態であれば連射も可能です』
「ええぇぇぇぇぇええええっ!? 一言で岩が消えたぁぁぁ!?」
ルナの叫び声が、静かな森に響き渡った。




