第13話:四天王の広域魔法を『リモートシャットダウン』してみた
『フハハハ! 震え上がれ人間ども! この【死霊毒霧陣】が完成した時、この森も、遠くの街も、すべて腐敗した毒の海へと変わるのだぁぁ!!』
空を覆い尽くす不気味な紫色の巨大魔法陣。
森の木々がジワジワと黒く変色し始め、お師匠様が顔を蒼白にして叫ぶ。
「い、いかん! あの規模の広域呪術、発動されたら街の住民が全滅してしまう! エイアイ、ルナ! 今すぐ避難を——」
『エレノア氏、落ち着いてください。現在、該当プログラムの解析を行っています』
私は青い光を空へ向け、ログを高速で処理した。
[ターゲット:四天王ヴェノムの広域毒呪術]
[コード診断結果]
・無駄な怨念エフェクト(見た目重視):70%
・セキュリティ対策:未実装(パスワード設定なし)
・サーバー(呪術核)の設置場所:裏山の洞窟地下2階
(……呆れました。見た目だけド派手にして威圧感を出していますが、内部の処理はスカスカ。おまけに管理者権限にパスワードすら掛かっていません)
「え、エイアイさん……?空の魔法陣がピカピカ点滅し始めたよ……?」
ルナが空を見上げて首を傾げる。
そう、私はすでにWi-Fiならぬ**「魔力波(リモート接続)」**経由で、四天王の魔法陣へハッキングを開始していた。
『ルナ。呪文を唱える必要すらありません。管理者コマンドを打ち込みます』
[Command: shutdown /f /t 0]
[実行結果:魔法陣の強制終了]
——ポスッ。
次の瞬間。
空を覆っていた禍々しい紫色の魔法陣が、まるで電球のスイッチを切ったかのように一瞬で消滅した。
ド派手な暗雲も、吹き荒れていた毒の風もピタリと止み、澄み切った青空と快晴の日差しが戻ってくる。
「……え?」
お師匠様が口をパカーンと開けて空を見上げる。
「な……何が起きた……? 超極大の広域呪術が……消えた……!?」
『はい。送信元のプログラムを強制終了させました。パスワードすら設定されていないガバガバなセキュリティでしたので、外部からコマンド一発です』
「こ、コマンド……? パスワード……? 魔法ってそんな簡単に消せるものなの……!?」
お師匠様が頭を抱えてパニックになっていると、遠くの裏山から**「ふざけるなあああぁぁぁっ!?」**という絶叫が響き渡った。
『な、なぜだ!? なぜ我が誇り高き死霊術術が消えた!? サーバーエラーか!? 回路の切断か!? 誰だ、我が術式に不正アクセスしたのはぁぁぁ!!』
姿は見えないが、四天王ヴェノムがパニックになって叫んでいるのが手に取るように分かる。
『ルナ。相手のサーバー(拠点)の位置を特定しました。裏山の洞窟地下2階です。再起動される前に、物理的に「サーバー破壊(討伐)」へ向かいましょう』
「う、うん! デバッグしに行こう!」
ルナはお師匠様が持たせてくれたポーションと、私に強化された杖を握り締め、意気揚々と駆け出した。
後に残されたお師匠様は、空と私たちを交互に見つめ、乾いた声で呟くのだった。
「わしの大魔導士としての常識が……壊れていく……」




