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パルフェ学園 軽音学部 結成秘話  作者: 潮騒めもそ


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8/11

第七話 初セッション

 プリスとシャルムの誤解が解けて本当に良かった。

 これでやっと軽音楽部として活動していけそうだと、リディと私は笑顔になった。


* * *


 放課後の軽音学部の部室は、思っていたより静かだった。


「……あれ? 先輩たちいないみたいだね」

 私は扉からそっと顔を出す。

 アンプも、マイクスタンドも、そのまま。

 窓から差し込む陽の光が、シンバルを鈍く光らせている。

 いつもはお喋りで賑やかな部屋だが、今日は抜け殻のようだった。

 リディがくるりと振り向いた。

「じゃあ——今がチャンスだね」

 その笑顔に、何故か胸が少し跳ねる。

「練習曲、どうする?」

 プリスがギターケースを開きながら聞く。

 リディは迷わなかった。

「もちろん、『マシュマロ』のデビュー曲で!」

「その曲なら……」

 シャルムはすぐにベースを肩にかけ、プリントをみんなに配った。

「……楽譜のコピーは用意しておいた」

 抑揚のない声には照れ隠しが滲んでいた。


 シャルムは気が利く子だな。


 私はドラムセットの前に立つ。

 スティックを握る手が、じわりと汗ばんでいる。


 ……ちゃんと叩くのは初めて。


 思ったより埃も積もっておらず、ドラムはお手入れされているみたいだった。

 椅子に座り、バスドラムに足を乗せる。

 ペダルが思ったより重い。

「大丈夫?」

 プリスがそっと覗き込む。

「う、うん……たぶん」

 リディがマイクの前に立った。

「完璧じゃなくていいよ。ボクたちの『マシュマロ』をやろう」


 この曲はシンセサイザーやキーボードも重要な曲……。


 私はリディの言葉に頷いて小さく息を吸う。

「いくよ——」

 スティックでカウントを取る。


 最初に鳴ったのは、プリスのギター。

 軽やかで一音一音がきれいに零れ落ちるような、アルペジオのイントロ。

 少し遅れて、シャルムのベースが重なる。

 低音が、ぴたりと寄り添う。

 プリスが、ほんの一瞬シャルムを見る。

 シャルムも口角を上げて視線を返す。

 音が、笑うように華やいだ気がした。

 リディの声透き通る声が乗る。

 まっすぐで、青空みたいな歌声。

 リディが歌うのを初めて聴いた。

 歌っている時のリディは急に大人びて見えた。

 ——そして。

 私は、スティックを振り下ろした。

 カン、と少し硬い音。

 タイミングが、ほんの少し早い。


 あ、いきなりずれた……!


 胸が縮こまる。

 でも、誰も止まらない。

 プリスはそのまま弾き続け、

 シャルムはリズムを少しだけ寄せてくれた。

 リディも、歌を崩さない。

 もう一度。

 今度は、バスドラムを踏む。

 ドン、と腹に響く振動。


 ……これが、私の音?


 胸の奥まで震える。

 ハイハットを刻む。

 まだぎこちない。

 でも、音が重なっていく。

 バラバラだったはずなのに、

 どこかで、ふっと噛み合う瞬間があった。

 ギターとベースが絡み、歌が伸びて、そこに自分のリズムが乗る。


 私、今ちょっとだけ音楽の心臓になれているかも!


 胸が熱い。笑いが込み上げる。

 最後のコードとシンバルの余韻が部室に広がる。

 部屋が四人の呼吸だけを残して静まり返る。

「今の、良かったよね?」

 リディがきらきらと笑った。

 プリスが大きく頷く。

「うん! 途中からぴたって合ってた!!」

「クレア、サビからちゃんとはまってたよ」

 シャルムが少し照れながら言う。

「えっ……本当に?」

 自分の手がまだ少し興奮に震えていた。

「音が揃うと気持ちいいね!」


 そうして初めての合わせ練習が終わった。

 私たちは息を切らしながら、お互いを見合わせていた。

「クレア、本当にドラム初心者なの?」

 プリスが目を丸くする。

「エアー練習はしてたの。あとね、この動画観ながら……」

 私は少し照れながら、端末の画面をみんなの前に差し出した。

 再生ボタンを押す。

 流れてきたのは、透明なピアノの旋律のオープニング曲。

 やわらかく転がる音に、きらりとしたギターのアルペジオとドラムの音が重なる。

 部室の空気が、ふっと変わる。

「……あ」

 リディが小さく息を漏らす。

 プリスも、シャルムも、同時に顔を上げた。

 この旋律には聞き覚えがある。

 放課後、春風と共に運ばれてきた、あの音色。

「ねえ、この曲……ヴェルテ君の弾いてた曲に似てない?」


お読みくださってありがとうございます!

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