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パルフェ学園 軽音学部 結成秘話  作者: 潮騒めもそ


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第六話 繋がるコード

 リディたちとの出会いから、数日が経った。

 あの日、あたしは結局リディの誘いを保留にした。

 でも、リディとクレアは諦めなかった。

 お昼休みになると、あたしを探して声をかけてくれた。


 そして今日——


「ねえ、プリス。どうして一人で音楽やってるの?」


 クレアが優しく聞いてくれた。

 あたしは少し迷ってから——これまでのシャルムとのことを、詳しく話してしまった。


「……そうだったんだ」


 リディは腕を組み、少しだけ考えるように目を細めた。


「ねえ、プリス。それってさ——」


 その視線が、まっすぐあたしを射抜く。


「嫉妬するくらい、シャルムも音楽に真剣ってことだよね?」


 胸が、ぎゅっと締めつけられた。

 シャルムの頑張りはあたしが一番知ってる。


「……じゃあ、シャルムにも声をかけてみる! 居場所なら調査済みだよっ!」


「え、ちょっと!」


「大丈夫。ボクたちは橋渡しするだけ。どうするか決めるのはキミたちだよ」


 そう言って、リディとクレアは中庭へ向かった。


「橋渡しって……!?」


 あたしは気になって、二人を追いかけた。

 そして物陰からこっそり様子を見守る。


 ――シャルムは、どうするの。


 胸がうるさいくらいに鳴っている。


 中庭のベンチには、シャルムが一人で座っている。


 ヘッドホンをして、「マシュマロ」のコードブックを持っている。

 きっとあの曲だ。

 あたしたちが初めて合わせた、あの日の曲。


 中等部の文化祭前の空き教室。

 ベースの低音が、あたしのギターにぴたりと重なった瞬間、すごく鳥肌が立った。


 ——この子となら、どこまでもいけるって思った。



「あの、キミ!」


 リディが肩をとんとん、と叩く。

 シャルムが目を本から離し、ヘッドホンを外す。

 久しぶりに見る顔。

 少しだけ、大人びたような気がした。


「ボクはリディ。こっちはクレア。キミがシャルムだね? 一緒にバンドを組んでほしいんだ」


「い、いきなりなに?」


 戸惑う声。


「リディ、いきなり本題に入りすぎだよ」

 クレアが苦笑しながら言った。

「あのね、実は少し前に駅前で出会ったプリスをバンドに誘ったの。その時に、シャルムちゃんのことを聞いて……」

 クレアがシャルムに説明を始めた。

「プリスは『シャルムのことが気がかりだから、ちょっと考えさせて』って言ってて」


「だからボクたち、キミにも話を聞きたかったんだ」


 リディの目は、真剣だった。


 シャルムは、しばらく黙り込む。


「……プリスが?」


 小さく呟く。


「ぼくは……プリスと一緒に音楽をしたい。ずっと、そう思ってた」


 その声は、震えていた。


「でも……ぼくは、プリスみたいに可愛くもないし、素直にもなれない」


 胸が、どくんと鳴る。


「男の子みたいに振る舞って、強がって……そんなぼくが隣にいたら、プリスの足を引っ張るって思った」


 違う。そんなの違うよ、シャルム。


「だから……練習をいっぱい頑張ってプリスに追いつきたかった。でもぼくがスカウトされた時辺りから、プリスはぼくと距離を置いた。ぼくじゃだめなんだ……」


「あれ? でも、プリスは『シャルムのことが気がかり』って言っていたのよ?」

 クレアが首を傾げた。

「それって、『一緒にやりたくない』って意味じゃないよね?」


 リディが、ふと視線を動かした。

 そして——あたしの隠れている方を見た。


「……プリス、そこにいるんでしょ?」


 リディの声にあたしは、心臓が止まりそうになった。


「出てきて。二人で、ちゃんと話した方がいいよ」


 足が、勝手に動いた。


「シャルム!」


 物陰から飛び出していた。


 シャルムが、はっとこちらを見る。


「プリス……?」


 息が乱れる。


「あたしは……シャルムの隣で弾きたいの」


 涙が、にじむ。


「文化祭の前、初めて合わせたあの日……覚えてる? あの低音が入った瞬間、あたし、震えたんだよ」


 シャルムの目が揺れる。


「あたしは、シャルムの才能が怖かった。あのスカウトの時、嫉妬しちゃったの……」


 声が震える。


「でもやっぱりシャルムの音がないと、あたしのギター、どこか宙に浮いてるみたいだった」


 一拍、息を吸う。


「怖かったの。シャルムに置いていかれるのが」


 視線を逸らす。


「だから私の方から逃げた。……ごめん」


 沈黙。


 風が、二人の間を通り抜ける。


「……ぼくで、いいの?」


 かすれた声。


「シャルムがいいの」


 即答だった。


「ぼく、強くないよ」


「知ってる。あたしもそんなに強くないよ」


「……本当にぼくと?」


「あたしのベースは、シャルムだけだよ」


 ぽろりと、シャルムの頬を涙が伝った。


「プリス……」


「一緒にやろうよ。もう逃げない」


 シャルムが、涙を拭いながら小さく笑った。


「……うん! またやろう」


 そして、少し照れくさそうに続けた。


「ぼくも、ごめんね。プリスの気持ち、ちゃんと分かろうとしなくて」


「お互い様よ」


 あたしも、涙を拭いながら笑った。


 あたしとシャルムは——

 やっと、本当の気持ちを伝え合えた。


 少し離れたところで、リディとクレアが静かに微笑んでいた。


「ねえ、プリス、シャルム」


「ボクたち、『マシュマロ』を超えるすごいバンド作りたいんだ」


 真剣な空と同じ青の瞳。


「誰かの背中を押せる音を鳴らすバンド」


 一瞬の静寂。


「キミたちとなら、できる気がする。一緒にやろう」


 あたしとシャルムは顔を見合わせた。


「やりましょ!」


「プリスとやれるなら、別にいいけど」

お読みくださってありがとうございます!

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