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 僕が飛び出して来たのに驚いているようすの水鏡先生と〈ミラーズ〉の動きが止まってしまっていた。

 いや、違った。僕が飛び出して来て驚いて止まっているんじゃない。

 水鏡先生たち同様に『それ』に気付いた僕は動きを止めてしまった。

 薔薇の香だった。僕ら全員の動きを止めさせたの風に乗って運ばれて来た薔薇の香……水鏡先生たちもこの香に何かを感じ取り動きを止めたに違いない。

 あいつが現れるに違いない。

 月明かりだけが照らす夜の闇の中、怖ろしく白い仮面は確かに笑っていた。間違いない、ファントム・ローズだ。

 ファントム・ローズは僕と水鏡先生の前に立ち、〈ミラーズ〉のことを見ているようだった。

 〈ミラーズ〉の一人が月光を浴び、銀色に輝く杖を構えてファントム・ローズに襲い掛かった。

 揺らめくファントム・ローズはどこからともなく一輪の赤薔薇を取り出すと、その匂いを嗅ぎ天に掲げた。

 すると、ファントム・ローズの周りを無数の薔薇の花びらが竜巻のように舞い上がった。

 美しくも荘厳な薔薇の花びらは〈ミラーズ〉に向かって降り注いだ。それはまるで血の雨のようで、薔薇の花びらは刃となり、〈ミラーズ〉の身体を容赦なく切り裂く。

 激しく舞い散る紅に彩られた〈ミラーズ〉は地面に倒れ、そこにファントム・ローズは空かさず白薔薇をダーツのように投げつけた。

 薔薇の花を突き刺された〈ミラーズ〉は口元を酷く苦痛に歪ませ、人の声とは思えぬほどの呻き声を張り上げた。すると、白かった薔薇の花が見る見るうちに紅く染まり、それと同時に〈ミラーズ〉の身体が枯れ木のように萎んでいき、衣服だけがその場に残され、その衣服さえも最期には砂になって舞い散った。

 ファントム・ローズは〈ミラーズ〉の居た場所に残された一輪の真っ赤に染まった薔薇の花を拾い上げ匂いを嗅ぎ言った。

「やはり、人の血の匂いではないな」

 僕は幻のような出来事を目の当たりにして、頭が真っ白になりかけた。でも、今ここで起きていることを見逃す訳にはいかない、事件の手がかりが目と鼻の先にあるのだから。

 水鏡先生が大声で叫んだ。

「世界の調和を望まないファントム・ローズを殺してしまいなさい!」

 僕が水鏡先生のいる方向を振り向くと、そこには六人の〈ミラーズ〉がいつの間にか集まっていた。

 一人のミラーズを水鏡先先の横に残し、残り五人のミラーズが月光を浴び薔薇の匂いを嗅ぎながらたたずんでいるファントム・ローズに襲い掛かる。

 ファントム・ローズは動こうとしない。そして、ミラーズたちがいっせいに杖を振り上げて飛び掛かろうとした時、薔薇を持つファントム・ローズの手がスナップを効かせるように動かされ、薔薇の花が鞭のようになり、撓り、蛇のようにうねった。

 鞭へと変化した薔薇の花が月下のもとで華麗に舞うファントム・ローズともに〈ミラーズ〉たちを打ちのめす。

 弱まった〈ミラーズ〉に止めを刺すべく、五本の白薔薇が天に舞い上がり、槍の雨と化して〈ミラーズ〉の身体を貫いた。

 薔薇は紅く染まり、〈ミラーズ〉の身体は先ほどと同様に萎んでいき、衣服は砂と貸して消えて逝った。

 白い仮面が不適な笑みを浮かべる。

「世界のバランスを崩そうとしているのは、お前たちではないのか?」

 手に持った薔薇をファントム・ローズは水鏡先生に付きつけた。しかし、水鏡先生は全く動じるようすを見せず、声を張り上げながら反論した。

「全ての人々の魂を一つの存在として、世界を一つのモノとして統合させるのよ。それこそが完璧な調和。悩みを持つ人々は他者と溶け合い、他人を知り、全てを知る。全てを知っているモノが悩むことなんてないでしょう?」

「人の悩みを強制的に他者が解決して何の意味がある? 世界は一人一人に与えられている。自分の世界は自分自身が管理するべきなのではないか?」

 水鏡先生がファントム・ローズの言葉を聞いてせせら笑った。

「そういうあなたこそ、そこの坊やの世界に首を突っ込み過ぎているんじゃないの?」

「私は迷える仔羊にきっかけを与えてるに過ぎない、最終的な判断は彼の決めることだ」

 僕には二人が何を言っているのかさっぱり理解できなかった。

 魂や世界を一つにするとか、水鏡先生はいったい何をしようとしているのだろうか?

 水鏡先生が残った一人の〈ミラーズ〉にファントム・ローズに襲い掛かるように命じて、その隙に彼女は闇の中へと逃げて行いく。

 ファントム・ローズは襲い掛かって来た〈ミラーズ〉を軽くあしらい地面に叩きつけると、急いで水鏡先生の後を追って闇の中へと姿を消してしまった。

 残された僕は動かずに地面に倒れこんでいる〈ミラーズ〉に近づいた。

 〈ミラーズ〉とはいったい何者なんだろうか?

 奇妙な服装と、そして何よりも僕が気になっていたのは目に巻かれている布だ。

 〈ミラーズ〉の素顔を見てやろうと思った僕は、〈ミラーズ〉の顔の横にしゃがみ込み、巻かれている布を取ろうとした。

 布に恐る恐る触れようとしている僕の手が震える。そして、布に手を掛けたもののきつく巻かれていてなかなか取れない、仕方なく僕は力いっぱい強引に外した。

 〈ミラーズ〉の素顔が露わになり、それを見た僕は愕然となり言葉を失った。

 息を呑んだ。

 信じられなかった。僕の目の前で死んだはずの椎名アスカの顔がそこにはあった。。

 目を閉じて無表情で気を失っていると思っていた〈ミラーズ〉が、突然目をかっと見開き不適な笑みを浮かべた。

 僕はその瞬間、頭を殴られたような激痛を覚え、その場で気を失ってしまった――。


 薄明かりの中で頭をふらつかせながら僕は意識を取り戻した。

 手足が動かない。僕の口と手足は縛られていて、身体の自由は奪われてしまっていた。

 部屋の明かりは数十本の蝋燭だけで薄暗く、部屋の大きさ、ましてやここがどこなのかなど検討もつかなかった。そもそもここはまだ学校内なのだろうか?

 僕がそんなことを考えていると、目の前の闇から大勢の〈ミラーズ〉たちが浮かび上がってくるように現れた。そして、最後に水鏡先生が姿を現し、僕に向かって微笑んだ。

 闇の奥から人を抱きかかえた〈ミラーズ〉が二人現れた。

 一人目の〈ミラーズ〉が抱えているのは僕と同じ学校に通う三年生の先輩だ。委員会が同じで世話になった記憶がある。

 そして、もうひとりの〈ミラーズ〉が抱きかかえていたのは、椎凪渚だった!

 やっぱり彼女はこいつらにさらわれていたんだ。

 二人を抱きかかえた〈ミラーズ〉たちが僕の前を通り過ぎて行く。その〈ミラーズ〉の進む道の両脇には蝋燭が順々に灯って道を示していく。

 そして、二人の〈ミラーズ〉の足が止まると同時に、眩い光を放ちながら人の全身を映せる大きさの古めかしい鏡が現れた。

 三年の先輩を抱きかかえていた〈ミラーズ〉が、先輩を鏡の前に降ろして鏡から離れると、先輩の身体がまるで糸で操られるような動きで立ち上がった。

 最初は真っ黒で何も映し出されなかった鏡に徐々に先輩の全身が映し出されていく。

 鏡を見ていた僕は何か不自然な感覚に襲われた。……あの鏡、逆さに映ってない!

 鏡は普通、物が逆さに映るはずだ。でも、あの鏡は違った。

 鏡がカメラのフラッシュのような光を放ったと同時に先輩の身体が糸を切られた操り人形のように地面にばたんと倒れた。

 だけど、鏡に映った先輩の姿は立ったままだ。

 そして、何よりも僕を驚かせたことは、この後に起こった。

 鏡の内に潜む人影が自ら意思で動き、鏡の表面が水面[ミナモ]のように揺れる。

 手が出た、足が出た。鏡の内から人が這い出して来る。

 何が起こったのか全くわからないで驚いている僕は、いつの間にか近づいて来た水鏡先生に声を掛けられてまた驚いた。

「何をしたかわかったかしら?」

「…………」

 口を縛られている僕は無言で首を横に振った。

「あの〈鏡〉は私が偶然、学校の地下室で見つけた物なのよ。私は〈鏡〉に言われたの、一緒に悩みのない世界をつろうって」

 水鏡先生は僕の口に縛られていた布を取ってくれた。

 しゃべるようになった僕はすぐに水鏡先生に質問をした。

「あの鏡がしゃべったって、どういうことですか!?」

「あの〈鏡〉が何だかは詳しく知らないけれど、あの〈鏡〉意志を持っているのよ。そして、私と同じ夢を抱いていた」

「『悩みのない世界をつくる』ですか?」

 水鏡先生は小さく頷いた。

「そう、私は保健室で多くの学生たちの悩みや相談を受けたわ。その悩みを解決させてあげたかった。そして私はあの〈鏡〉に出会ったの」

「悩みを解決させるってどうやって。それにどうして生徒たちをさらったんですか?」

「あの〈鏡〉は悩みや不安をエネルギー源としていて、そういった人々の魂を体内に吸収し、一つのものにする能力を持っているの。そこで私は藤宮彩という保健室によく悩みを抱えて訪れていた生徒にある噂を教えて、〈クラブ・ダブルB〉を彼女に探させると同時にいろんな生徒に噂を流してもらい、悩みを持った生徒を探したのよ。そして、他の者に気付かれぬようにして悩みを持った生徒に近づき、〈鏡〉の元へ連れて行った」

 僕の頭は完全に混乱している。そんな僕が言えたのはこんなことくらいだった。

「あ、アスカは、死んだはずのアスカに会いました。どういうことですか?」

「今見たでしょう、〈鏡〉の力を?」

「今?」

「〈鏡〉は映し出した人の肉体と魂を複製することができるのよ。複製された人間は〈ミラーズ〉となり、その〈ミラーズ〉からまた複製された人間が家に返されるのよ。でも、複製を繰り返したモノはあまり長持ちをしないのよ、そのためすぐに壊れてしまい精神異常をきたしてしまう、それが難点だったわね。でも、時間稼ぎができればそれでよかったのよ」

 鏡には内面までは完璧に映し出せないということなのかもしれないと僕は思った。だから複製するたびに出来が悪くなるんだと――。

 渚を抱えていた〈ミラーズ〉が渚のことを鏡の前に降ろした。それを見た僕の頭に疑問が次から次へと沸いてくる。

「複製された、最初の本人はどうなるんですか?」

「本人は最初の複製の時に〈鏡〉よって魂を抜かれ、魂は鏡の中に吸い込まれて、魂同士が混ぜ合わされて一つのモノになるの。全ての人間が一個の個体として存在する、そして悩みは全て解消されるわ」

「あ、あの、肉体はどうなるんですか?」

「肉体はもう不要でしょ?」

「じゃあ元には戻れないってことですか!」

 僕は大声を出した。

「元に戻る? どうして?」

 僕は水鏡先生の言葉に愕然とさせられた。魂は混ぜ合わされて、肉体はもうないということなんだと思う。つまり、生徒たちは……アスカはもう帰って来ないってことなんだと思った。

 渚の身体が糸で操られるように立ち上がった。ダメだ、どうにかして止めさせないと渚まで……。

 僕は大声で叫んだ。

「止めろ! 今すぐ止めるんだ!」

 水鏡先生は僕に向かって微笑みこう言った。

「あなたも一緒になれば、そんな些細な事気にしなくなるわ。さぁ、あなたも一緒になりましょう」

「イヤだーっ!」

 僕が大声で叫んだと同時に辺りを照らしていた蝋燭の火が全て消え、辺りが暗闇に包まれたかと思うと、僕の鼻を薔薇の香りが衝いた。

 闇の中で激しく『何か』が割れる音がして、大勢の悲鳴があがった。

 僕は頭がクラクラして意識が朦朧となり、そのまま気を失ってしまった――。


 僕が目を覚ましたの自宅のベッドの上だった。

 時計の針は朝の七時半を指していて、カレンダーに目をやると今日からまた学校がはじまる日にちだった。

 僕は学校に行く気など全くっていうほどしなかったけど、いろいろなことが気になって仕方なく学校に行くことにした。

 学校はいつも通りだった。クラスに入ってもなんら変わった雰囲気もない。

 ……いや、何かが違う。この前まで休んでいた生徒たちが登校している。事件で登校を控えていた生徒が登校している。

 鳴海愛と話がしたかったけど、彼女は学校に来ていないようだった。だから、僕はすぐに椎凪渚の教室に向かった。

 渚は教室にいた。

 教室で楽しそうに友達と話していた渚だったけど、僕に気づくとすぐに僕に駆け寄って来て、そのまま僕の手を引いて、普段生徒たちには余り使われることのない学校の隅の方にある階段の前まで引っ張っていかれた。

 そこで渚が顔を少し膨らませて、僕のことを上目遣いで睨んだ。

「涼ったら、あんまりあたしの教室に顔出さないでって言ってるでしょ?」

「えっ、な、何が」

 突然変なことを言われて僕は戸惑った。

「あたしたちが付き合ってるの一様周りには内緒なんだからぁ〜」

「えっ、僕らが付き合ってるだって!?」

「ひっどぉ〜い。とぼけちゃって、もしかして、好きなひとができてあたしと別れたいとか?」

「そ、そうじゃなくて……あの」

 何が何だかわからない、僕が渚と付き合ってるなんてどういうことなんだ?

「涼の方からコクってわたしたち付き合ったんだよぉ」

 渚は今にも泣きそうな瞳で僕のことを見ている。

 でも、僕は渚と付き合った記憶なんてない。……いや、待てよ。

「僕たちさぁ、屋上で出合って、一緒に昼飯食べるようになって、それで一緒に帰るようになって、学校の帰り道で僕が渚に告白して……それで……」

「そうだよ、涼があたしのこと『好きだ』って言って、そのまま抱きしめたんじゃない!」

 そう、そうっだった。……いや、違う、そんな記憶なんてない。……やっぱりある、でもない。

 僕は混乱する頭のまま、あの事件について話を聞いた。

「〈ミラーズ〉は、〈クラブ・ダブルB〉は、消えた生徒たちは?」


「いきなり何の話してるの、マンガかアニメの話? そうやって話をすり変えるつもり?」

「そ、そうじゃなくて、事件はどうなったの、だって渚はさらわれて、いや、だって、僕らは鳴海さんと一緒に事件を追って……」

 そして、予期せぬ不思議な答えが返ってきてしまった。

「鳴海さんって誰?」

 この言葉を聞いた僕は血の気が引いてぞっとした。

「鳴海愛だよ、渚の家に住んでる僕と同じクラスの」

「隣りに? ……そんな人いないけど?」

 もう、僕には何が何だかわからなかった。

「大丈夫? 涼の顔真っ青だよ、保健室に行った方がいいんじゃない?」

 そうだ、保健室だ、水鏡先生はどうなったんだ?

 でも、保健室に行くのが恐かった。何か嫌な感じする。正直もう家に帰りたかった。

「ねぇ涼ったら、だいじょぶなの?」

「あ、う、うん」

 その時、学校のはじまりを告げるチャイムが廊下に鳴り響いた。

「あ、朝のホームルームはじまっちゃうよぉ〜、早く行かないと遅刻にされちゃう。ほら、涼も急いで!」

「そ、そうだね」

 僕と渚はいっしょに走って、それぞれの教室へと急いだ。

 教室に戻った僕はまた鳴海愛を探したが、どこにもいない。今日は休みなのかもしれないけど、僕はもっと嫌な予感がしていた。

 鳴海愛の席がない。ないというか、別の人が座っているという方が正しいかもしれない。クラスから生徒の席が一人分消えてしまっていた。

 一時間が終わり僕はすぐに友達たちに事件のことを聞いて見たけど、〈クラブ・ダブルB〉、〈ミラーズ〉って何? と言われてしまった。消えてしまった生徒の名前も出してみたがそんな人学校にいたっけ? と言われてしまった。

 僕はその後もいろいろな人に話を聞いたけど誰も事件について知っている人はいなかった。そう、まるでそんな事件なんて最初からなかったように……。

 消えた人たちは最初から存在していなかったことになっていた。

 そう言えば最初から居なかったような気がしないでもない。でも、居たという記憶もある。

 昼休みになり僕は意を決して保健室へと足を運んだ。

 そこにいたのは水鏡先生とは違う女の先生だった。でも、僕はその先先のことを知っているけど、知らない。

 最初からいたような気がする。この保健室の先生との過去の記憶が確かに頭の中にはある。だけど、知らない。……知っているけど、知らない。

 僕はその後の授業など一つも身に入らなかった。今日一日中こんな感じだった。

 そして、混乱した頭のまま家路についた――。

 家に帰る途中、生物の気配が一気にすぅーっと消えていき、薔薇の香がした。そして、あのファントム・ローズがまたも僕の前に姿を現した。

 白い仮面は『無表情』だった。

「失われた魂は、もう決して元に戻ることはない。だから、世界はこういう形を取らざるを得なかった」

 つまり、事件に関することを全てが存在しなかったことにしたのだと。

 だけど、僕の記憶の中には今の世界の記憶と前の世界の記憶が一緒に存在してしまっている。なんで、そんなことになっているんだろう?

 ファントム・ローズは言った。

「世界は本来、一人一人に与えられているのが原則だ。だけど、君は世界から弾かれた」

 僕にはファントム・ローズが何を言っているのか全くわからなかった。

「意味がわからない、僕の恋人のアスカはどうなったんだ?」

「君の恋人は椎凪渚だろ?」

 そう僕の恋人は椎凪渚だ……でも。

「……でも、違う!」

「椎名アスカなんて人間は最初から存在しなかった。涼、君は私と同じように世界から弾かれてしまったんだ。自分の世界を持たず、人の世界に生きる者、そういう存在なんだ」

 ファントム・ローズの『仮面』は酷く哀しそうな顔をした。

「私にはこうなることがわかっていた。けれど君ならばこの呪縛から逃れられるのではないかとも思っていた。しかし、結局君は世界から弾かれた」

 そして、ファントム・ローズは渦を巻く多量の薔薇の花びらに囲まれ姿を消した。

 大量の薔薇の花びらは風に煽られ、天を舞い、世界を薔薇の香で満たした。

 僕は目を瞑りその場を動くことができなかった……。


 終わり方は人それぞれだと思う。

 でも、僕はこの終わり方には納得いっていない。

 消えた人は結局帰ってこなかった。

 いや、居なかったことになってしまった。

 全てが幻のようだ。今僕が生きている世界さえも……。


 END

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