第098話|ココ編【……背負わせない……】
「……」
パックたちは耳を塞いで縮こまっていた。
飛行型魔族に怯えたからではない。
アーラの音攻撃から身を守るためだった。
上空で炸裂したアーラの音攻撃は、飛行型魔族に直撃した。
パックは耳を塞いでいたが、音が手を貫通して、耳鳴りが止まらなかった。
蜂たちは一斉に離脱して難を逃れた。
一方、エルザはパックが体で覆っていたので無事だった。
次の瞬間、パックたちが大きな影に包まれた。
「——え?」
見上げると、飛行型魔族が降ってきた。
「——っ!?」
「わぁっ!」
パックは慌てて横に飛んだ。
ドォォォォン!
土煙が上がった。
「……いててて……」
「げほっ、げほっ」
「——!?」
パックは慌てて胸ポケットを開いた。
ひょっこりとエルザが顔を出した。
パックは肩をすとんと落とした。
「良かったぁ……無事で」
エルザがパックの方を向いた。
「……ありがとうございます。おかげで助かりました……」
働き蜂たちも戻ってきた。
「良くやった人間、褒めてやる」
「……ああ、うん……ありがと……」
パックの顔が引きつった。
パックは空を見上げた。
アーラがバランスを崩しながら、ゆっくりと滑空して降りてきていた。
そして、アーラの翼の穴から光が漏れた。
「——!?」
「……アーラ……」
パックは落下した飛行型魔族を見た。
「……」
飛行型魔族はピクリとも動かなかった。
パックたちは、森が少し開けた場所に移動してアーラが降りてくるのを待った。
アーラが地上に近づいてくるにつれて、傷口があらわになった。
パックの頬に雫が落ちた。
触れるとぬるりと指が滑った。
「——血っ!?」
「——大変だ!」
パックは慌ててアーラが着陸する際のサポートを、精霊たちにお願いした。
そして、アーラは無事に着陸した。
ココは愛馬の手綱を引き、停止させた。
上空の異変を追って、やっと到着したところだった。
「——っ」
ココはパックたちの様子を見て、言葉を失う。
アーラが負傷して横たわっているのが見えた。
急いで馬を降り、駆け寄った。
膝をつき、傷口を見た。
傷は深く、翼には穴が開いていた。
手が震えた。
鞄から布を出して、傷を押さえた。
「……アーラ……ごめん、遅くなって……」
言葉は通じなかったが、伝わったようだった。
アーラは首を上げ、一度だけ力無く唸り、また大地に頭を預けた。
「……」
言葉が出てこなかった。
ココはハッとして、地に落ちた飛行型魔族に視線を向けた。
オーブを構え、ゆっくりと近づいた。
飛行型魔族は横たわり、動くことはなかった。
「……」
その様子を見て、ココはオーブを下ろした。
背後からパックの声が聞こえた。
「……アーラが一人で、戦ったんだ……」
そう言って目を伏せた。
ココは飛行型魔族から視線を外さずに答えた。
「……そう……」
「……」
パックはそれ以上言葉にできなかった。
ココは再度オーブを構えた。
「……とどめは、私がやるわ……」
「……」
パックはそっとココの手を握った。
「——!」
ココはパックを見た。
パックは飛行型魔族を見つめた。
「……君だけに、背負わせない……」
パックはあえて言わなかった。
飛行型魔族が、同胞を助けようとしていたことを……




