第096話|ココ編【……ためらって、しまった……】
「——くっ」
アーラの声はもう飛行型魔族に届かない。
友は人間たちを殺してしまった。
その事実は変えられなかった。
アーラは目を細めた。
「……俺の手で……やるしかない……」
トサカが震える。
くちばしを広げた。
その時、また“声”が聞こえてしまう。
「……助ける……」
「——っ!!」
アーラは一瞬だけためらった。
飛行型魔族の背後に魔法陣が現れる。
そして、一拍遅れてアーラの音攻撃が放たれた。
——ギィィィィン!
同時に魔法陣から風の刃が放たれた。
アーラの音攻撃を、風の刃が数枚抜けてきた。
「——っ!?」
アーラが咄嗟に回避する。
だがその風の刃は、無慈悲にもアーラの足と尾を削った。
そして、アーラの音攻撃を喰らった飛行型魔族もまた、直撃こそ逃れたが、無傷では済まなかった。
アーラと飛行型魔族はバランスを崩す。
アーラは苦悶の表情を浮かべ、血飛沫とともに落下する。
飛行型魔族も耳から出血し、頭部をだらりと下げ、落下する。
その光景を見ていた働き蜂たちが、震えながらエルザに言う。
「女王様っ、攻撃の許可をっ!」
「——待って!」
パックはアーラを見つめ、手を震わせた。
その時、飛行型魔族が落下の途中で意識を取り戻す。
働き蜂たちが、パックに詰め寄った。
「——あのままじゃあ、相打ちになる!」
パックは震える手を、もう片方の手で押さえつけた。
「……そうかもしれない……」
「……でも」
飛行型魔族の体の周りに魔法陣が展開する。
「——っ」
「……アーラは言った……頼むって……」
「“危ないから来るな”じゃなかった……」
「——!?」
働き蜂たちは言葉を失った。
——正面から!?
まるで、アーラのためらいを見透かすかのような大胆な攻撃。
アーラと飛行型魔族の目が合った。
時が止まった。
その時、アーラは声が聞こえたわけではなかった。
飛行型魔族の瞳の奥に、無垢な意思を感じてしまった。
「……」
そして、判断が遅れた。
魔法陣から風の刃が放たれる。
「——っ!?」
アーラは咄嗟に旋回した。
アーラを追うように風の刃が流れていく。
その刃は再度、アーラの尾を削り、足を削り……
そして、弱点の翼を貫通した。
「——っ!?」
アーラは声にならない叫びを発した。
飛行型魔族もまた、アーラの音攻撃のダメージで、ぐらりとバランスを崩した。




