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第094話|ココ編【……今、確かに声が……】

———南部の村


村は静まり返っていた。


飛行型魔族が落ち着きなく歩き回っている。


そして———


地面には、逃げ遅れた村人たちの骸がいくつも転がっていた。


家屋からは火の手が上がっていた。


アーラが上空から反響音を捉える。

「……ちぃっ、人間たちはもうダメだ……」


「……小僧、切り替えろ。良いな?……」


「……」

パックは黙って頷いた。


「……奴も飛べる……まだ距離があるが、手前に降りるぞ」


アーラが翼を傾けた——その時だった。


飛行型魔族と目が合った気がした。

「……!?」


飛行型魔族が飛び立つ。


力強い羽ばたきが見えた瞬間。


一気に距離が縮まる。


「———なっ!?」

アーラが急旋回する。


パックたちから悲鳴が漏れる。


次の瞬間。


ザァッと音を立てて飛行型魔族の目の前を、黒い大群が横切る。


飛行型魔族は視界を遮られ、咄嗟に軌道を変える。


黒い大群の正体は、働き蜂だった。


アーラはその隙に、パックたちを降ろす軌道に入る。


だが、飛行型魔族はアーラの動きを見逃さない。


飛行型魔族が上昇する。


そして太陽を背にしてアーラたちに急降下してくる。


その動きは、まるで正気を保っているかのように戦略的だった。


パックは太陽で目が眩む。


飛行型魔族は落下速度に加えて、翼を羽ばたかせる。


——さらに加速する。


鋭いくちばしを閉じて、一直線に突っ込んでくる。


だが、アーラには“音”があった。


アーラは目を閉じたまま、飛行型魔族の正確な位置を掴む。


そして、飛行型魔族の体の向きと軌道を読む。


アーラは飛行型魔族の腹の下に、潜り込むように軌道を変える。


飛行型魔族は速度を上げすぎていた。

腹の下に潜り込まれては、すぐには軌道を変えられない。


そしてアーラと飛行型魔族がすれ違う。


——その時だった。


ほんの一瞬。


パックが飛行型魔族の“声”を捉えた。

「……同胞……助ける……」


「——っ!?」

パックは眩んだ目を擦り、何が起きたのかすら分からなかった。


だが、確かに聞こえた。


アーラはあえて、木が密集する森に突っ込む。

「頭を下げろっ」


パックはアーラの怒鳴り声にすぐさま反応して、身を屈め、エルザを庇いしがみつく。


密集した木に隙間など見当たらない。


木が迫る。


パックはひゅっと喉を鳴らす。


「……精霊とやら、力を貸せ」

アーラが呟く。


すると“お節介な風”が枝葉を揺らし隙間を作る。


アーラが翼を畳み、その隙間に突っ込む。


パックの頬を葉や枝が掠める。


そして、“寡黙な土”が硬い大地を、耕したような柔らかな土に変える。


アーラは着地と同時に、パックをその柔らかな土の上に放り投げる。


「……いててて……」

パックは胸ポケットのエルザを守って丸まっていた。


背中の“荷物”が無くなったアーラは、首を鳴らす。

「……さぁ、空を制するのは、お前か、俺か……どっちだ」


飛び立とうとしたその時、パックが叫ぶ。

「待ってアーラ、声が……」

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