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第093話|ココ編【……一筋縄では……】

———森の中


召喚術士隊長が両手で自分の頭を掴み、声を震わせた。

「……今のを見たか……素晴らしい……」


「……鷲の頭と翼、そして獅子の体……」


隊長は両手を見つめた。

「……召喚は……成功だ……」


「……ふふ……ふははは……」


「……」

兵士は喉を鳴らし、隊長から目を離せずにいた。


もう一人の召喚術士が兵士に言った。

「……何をしている。すぐに報告に行け」


兵士がハッとして、敬礼した。

「……ハッ」


急いで馬車に戻り、結果が書かれた紙を小さな筒に入れた。

そして、教団本部に向けて伝書鳩を飛ばした。


———同日、ココの屋敷


教団本部から、早馬が到着した。


南部の村に魔族が向かっているとの情報だった。


屋敷内が慌ただしくなった。


ココは敵の情報に目を通した。

鷲の頭部と翼を持ち、獅子の体をした飛行型——


ココはアーラを思い出した。

(……一筋縄では……いかなそうね……)


執事長はすでに荷物を準備していた。

ココはそれを受け取り、愛馬へ跨った。


ココは南の空を見た。

「……行ってくるわ」


執事長が胸に手を当て、祈りを捧げた。

「……ご武運を……」


ココは執事長を見て微笑んだ。

「……うん、頑張る」


「……」

執事長はココの返事から、わずかな不安を感じ取った。


そして再度、祈りを捧げた。


馬は軽くいななき、前足を高く上げ、駆け出した。


馬を走らせながら、対空戦闘を想定した訓練を頭の中で繰り返した。

「……上手く、出来ると良いけど……」


馬の蹄の音が、街道をなぞっていった。


———少し前、みかん畑


アーラが首を上げた。

「……」


パックがそれを見て反応した。

「……まさか……」


アーラがパックをちらりと見た。

「……あぁ、その“まさか”だ……」


「……行くんだろ?」


パックが目を伏せた。

「……ごめん、お願い」


肩の上のエルザが割り込んだ。

「……どこに行くんですか?」


「……」

パックはエルザを見て少し黙ってしまった。


それを見て、アーラが代弁した。

「……“壊れた同胞”を討ちに行く」


「……」

エルザは一呼吸あけて呟いた。

「……そう、ですか……」


パックはエルザの動揺を察した。

「……エルザはここに残って、待ってて」


肩の上のエルザを降ろそうとすると、エルザがパックの胸ポケットを指して言った。

「……私、そこに入れそうです」


パックが胸ポケットを見た。

「えっ……ここ?……戦闘になるよ?……危ないよ」


「……私たちは、もう仲間ですよね……待ってるだけのお荷物にはなりません」


「……ひょっとしたら、お役に立てるかもしれません……」


一匹の働き蜂が割って入った。

「……女王様、もう言っても良いのでは?」


「……」

エルザは我が子を見守るように、働き蜂たちを見た。


働き蜂がパックに言った。

「……女王は戦えませんが、我々は毒針で戦えます」

「殺傷力は低いですが、部分的に麻痺させることができます」


「……集団で刺せば、少しの間、動きを止められます」


「……」

エルザは子どもたちの“覚悟”を尊重した。

「……ですが、あなたたちは——」


エルザが言い終わる前に、反響音を捉えたアーラが叫んだ。

「まさか……」


声は動揺を隠せていなかった。

「……この輪郭……奴か……」


パックはアーラを見た。

「……知ってるの?」


アーラの目が細まった。

「あぁ……誇り高い種族だ……」


「……この戦い……一筋縄ではいかんぞ……」


「小僧、お前は地上でエルザを守れ」


「……必要なら隠れろ……危険を感じたら……逃げろ」


「……お前を乗せて、戦える相手では無い」


「……」

普段は見せないアーラの鋭い殺気に、パックは喉を鳴らした。

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