第077話|ココ編【……止めないと……】
———ココの屋敷
ココは今回の戦いで得た経験を、書き記していた。
そして、新たな魔法の組み合わせを研究していた。
だが、どうしても分からないことがあった。
“なぜ、壊れた魔族は村を襲うのか”
ココはアーラを知っているからこそ、分からなかった。
我を失っていたとしても、人間の村を襲うという理屈がつながらない。
アーラも言っていた。
「人間たちを襲う理由などない」と。
だが、証拠の欠片すら見つかっていなかった。
このままでは、犠牲者は増えるばかりだった。
ふと、先日のエリック隊長宅での出来事を思い出した。
「……」
気づくと、ペンを強く握りしめていた。
命を落とした本人だけではない。
その家族までもが——
なんとか、この戦いの連鎖を止めたかった。
そしてまた、手が止まっていることに気づいた。
「……」
ココはオーブを見つめた。
椅子から立ち上がり、窓の外へ目を向けた。
青く澄んだ空が、どこか現実のものではないように思えた。
そのまま、ずっと遠くを見つめた。
———上空
パックもまた、同じ疑問に悩まされていた。
アーラへ、もう一度尋ねた。
「……何度聞かれても、理由は分からん。すまんな」
「ただ、あの村に何か違和感があったのは確かだ」
「その正体が音でも出してくれれば、俺にも分かるんだが……」
アーラが目を細めた。
「……壊れた連中は、確かに理性を失う」
「だが、あれほど一直線に人間の村へ向かうのは妙だ」
パックが顔を上げた。
「……妙?」
「ああ。獲物を追う動きではない」
「……何かに、引かれているような動きだ」
パックは、いまひとつ腑に落ちなかった。
「村が、魔族を引きつけてるってこと?」
「そういうことになるな」
「アーラは、引きつけられてないよね?」
「……俺は壊れたことがない。それ以上のことは分からん」
「……だが、今回分かったことがある」
「あれだけの数の“壊れた同胞”が、乱れもせず村を襲った……」
ザワッ——
パックは、全身の毛が逆立つような感覚に襲われた。
気づくと、拳を握りしめていた。
「……一刻も早く、探さないと」
アーラがさらに続けた。
「……村の探索は、小娘にしかできんぞ」
「俺も小僧も、人間のいる村には入れん」
パックが上を向いた。
「それなんだよなぁ……」
「……ココに会わなきゃ」
「この戦いの連鎖を、止めなきゃ」
アーラも、パックの言葉に同意した。
同胞たちがこれ以上、殺戮の道具にされないために。
「……だが、どうやって会う?」
パックが顎に手を添えた。
「……」
「ちょっと思いついたことがあるから……そこまで連れて行ってくれる?」




