↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
68/149

第068話|ココ編【……生きて、帰る】

——別働隊


隊長は、血まみれの手で、家族からの手紙を入れた御守りを握りしめていた。


赤い雫が、乾いた大地へ落ちた。


蟻の魔族についての情報は、ココから聞いていた。


だが、手強かった。


いや——勇者ココがいてこそ、得られた情報だったのだと痛感した。


狂信者たちが、高額な寄付金を納めることで出世していく中、彼は実力だけで隊長にまで昇り詰めた。


それでも、敵が多すぎた。


部下たちが次々と命を落としていく中、奮闘を続けていたが、そろそろ限界だった。


生き残った部下たちの顔を見た。


全員、生気を失いつつあった。


これ以上、部下たちを死なせるわけにはいかない。


(……ココ隊に合流するしかないか)


それ以外に、全滅を回避する方法はなかった。


「……全員、よく聞け。これよりココ隊に合流する」


「突破するぞ。最後の力を振り絞れ」


「ハッ!」


返事が揃った。


隊長も、残った気力を振り絞った。


「よし、続け」


「全方位を警戒。隊列を乱すな」


「建物のそばは避け、道の中央を進む」


「その方が安全だ」


隊長の判断で、重い装備は早々に捨てていた。


盾も捨てた。


槍と剣だけを持った、軽装で戦っていた。


だからこそ、ここまで生き残ることができた。


敵が視界に入っても戦闘は避け、合流を優先した。


すべての判断を、隊長自身の責任で下していた。


進行は順調だった。


合流地点まで、あと少し。


その時だった。


子どもの泣き声が、聞こえた気がした。


部下たちも足を止めた。


「……隊長」


隊長は確信した。


「……俺にも聞こえた」


ココの言葉を思い出した。


「村人の救助が最優先よ」


隊長も、同じ考えだった。


しかも、子どもの声。


村人の生き残りで間違いない。


「……全員、同じ意見か?」


「はい」


全員が即答した。


「捜索を開始する」


蟻の魔族が“音”に反応するかどうかは、分からなかった。


だが、捜索には“声”が必要だった。


呼びかけながら、返事のする方角へ進んだ。


やがて、崩れた建物の隙間から、子どもの声が聞こえた。


「いたぞ! この中だ!」


「待ってろ! 今、助けてやるからな!」


全員が集まり、瓦礫を退かし始めた。


瓦礫の隙間から光が差し込み、子どもの手が見えた。


蟻の魔族は来ない。


あと少し。


いける。


最後の瓦礫を退かし、隊長が手を伸ばした。


「掴まれ。引き上げてやる」


小さな手が、隊長の手を掴んだ。


その手を引き上げた。


子どもは奇跡的に、すり傷程度で済んでいた。


全員が胸を撫で下ろした。


その時だった。


ギギギギ……


建物の影から、蟻の魔族が現れた。


隊長は、一番若い兵士に子どもを預けた。


「命令だ。子どもを担いで、勇者様と合流しろ」


「……我々が、足止めする」


若い兵士は子どもを担ぎ、走り出した。


蟻の魔族は動くものに引き寄せられ、子どもを担いだ兵士を追おうとした。


隊長がすかさず、蟻の魔族の複眼を槍で突いた。


「……貴様の相手は、我々だ」


蟻の魔族が怒り、隊長へ噛みついた。


隊長は、間一髪で避けた。


その死角から、別の兵士が槍で突いた。


甲羅の隙間へ槍が滑り込み、深く刺さった。


生き残っていた兵士たちは、いずれも実力者だった。


蟻の魔族が、槍を突き刺した兵士へ噛みついた。


兵士は避けた。


別の兵士が、死角から槍で突いた。


蟻の魔族がもがいた。


——勝てる。


そう思った。


その時だった。


ギギギギ……


複数の威嚇音。


隊長は周囲を見た。


奥歯を噛み締めた。


すでに、四方を囲まれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。