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第052話|ヘル編【まぁ、良いか!】

———村に到着した。


村は街道沿いにあり、宿屋や飲食店などが多かった。


ヘルは到着するとすぐ、村長に販売許可をもらいに行った。


王都で仕入れた品は、地方でよく売れる。


そして、地方の特産品を王都で売り、生計を立てていた。


戻ってきたヘルは、すぐに出店の準備を始めた。


パックは財布を用意して待っていた。


「あれ? 食べに行かないの?」


ヘルは作業を続けながら答えた。


「品物は“鮮度が命”だからな」


「ここで食えそうなもん、適当に買ってこい」


「任せてよ」


じゃらっと派手な音をさせて、パックは財布を取り出した。


ヘルがツッコむ。


「……待て。小さい方の財布で行け」


パックは頭をかいた。


「あ、そっか」


ヘルは盛大にため息をついた。


——数分後


パックが、すごい数の串焼きを買って戻ってきた。


「おまけしてくれたよ!」


ヘルの肩が落ちる。


「……お前、それ、買わされたんだよ」


「……ったく」


隣の露店の店主が「景気が良いな」と笑い、パックから串焼きを数本買ってくれた。


だが、二人で食べるにはまだ多かった。


ヘルは、子連れの客の子どもに残りの串焼きをサービスし、その親に商品を買わせた。


パックは、ヘルの機転を横から見ていた。


——そして、日が落ちてくる。


周りの露店も、ぽつぽつと店じまいを始めていた。


ヘルはふと、ゴミ箱の中に捨てられた大量の串に目を留めた。


笑いが込み上げてくる。


「……クッ」


「……ハハッ、ったくよ」


「……初日にしては、まあまあだったな」


ヘルも店じまいを始めた。


———


ヘルは、前から行ってみたかった店に足を運んだ。


店番をするときの、“よそ行きの服”を着ていた。


パックの格好が少し気になったが、“まあ、大丈夫だろう”と楽観視していた。


カラン、とドアの鈴が鳴る。


腕にナプキンを掛けた店員が、二人を迎えにきた。


「いらっしゃいませ」


「……お二人、で、よろしいですか?」


店員は笑顔のまま、パックを見た。


ヘルは“よそ行き”の口調で答えた。


「ああ、テラス席、空いてます?」


店員はかしこまった。


「あいにく、テラス席は満席でして。店内のお席でしたらご案内できますが、いかがなさいますか?」


ヘルは軽く頷いた。


「じゃあ、店内で良いよ」


「……こちらへ」


店員は手のひらを向けて案内した。


店員はヘルの椅子を先に引いた。


ヘルが座る。


続いて、パックの椅子を引いた。


パックは膝の裏に椅子が当たり、よろけながら座った。


そして、店員にお礼を言った。


「ありがとう」


すると、隣の席の“身なりの良い客”が、聞こえるように呟いた。


「……この店は乞食が来るのか」


「料理の匂いが台無しだな」


ヘルが舌打ちする。


「……チッ」


パックを見ると、テーブルに並ぶカトラリーをまじまじと見つめて、気づいていなかった。


「パック、やめだ。別の店にするぞ」


そう言って、入り口へ向かう。


「えっ? なんで? 来たかったんでしょ?」


パックは急いで立ち上がった。


ヘルは振り向いて、肩をすくめた。


「……気が変わった。もっと気楽に食べたくなってな」


「行くぞ。ついてこい」


ヘルは黙って前を向いたまま歩いた。


パックはヘルの方をちらちらと見ながら歩いた。


夜風が、少し冷たく感じた。


ヘルは居酒屋の前で足を止めた。


そして、親指で店を指した。


「ここ、美味ぇからよ。入るぞ」


パックは店の看板を見た。


「僕、お酒飲めないよ?」


ヘルが笑う。


「バーカ、酒以外もあるっつうの」


「酒を飲ませるための店だからな。料理は格別だ」


「……ミルクもあるぞ?」


ヘルは、歯を見せて笑った。


パックもつられて笑顔になる。


「じゃあ、それにする」


二人は店に入った。


自分たちで椅子に座った。


ヘルはどかりと座り、足を組んだ。


店員を呼び、酒とミルク、それから料理をいくつか注文した。


二人は、届いたジョッキとミルクのコップをぶつけた。


ヘルは酒を思いっきりあおった。


食道が熱くなった。


そして、肺の空気全部が、ため息になった。


——その日の酒は、格別だった。

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