第044話|ココ編【……】
ココの愛馬が駆ける。
パックはココの後ろに乗っていた。
ココがもじもじする。
「ちょっと、そこじゃなくて、ベルトを掴んでくれる?」
パックが焦る。
「あっ、ごめん。乗り慣れないから……」
ココが返す。
「アーラに乗る方が、難しいと思うけど」
言った後に、しまったな、と思った。
同時に、ちょっとアーラに乗ってみたかったな、とも思った。
パックが振り返り、空を見上げた。
ココはバランスが少し崩れたが、何も言わなかった。
村に入る前にパックを降ろす。
「ここで待ってて、村の人と話してくる。パックが見られるとマズいかもしれないし」
「そしたら、今日中に王都に出発しましょ」
パックはまた、空を見ていた。
「……わかった」
———王都
到着は夜だった。
門兵は、ココに敬礼をした後、パックをジロリと睨んだ。
ココが門兵に説明する。
「戦災孤児よ」
王都では戦災孤児が、当たり前のように受け入れられていた。
だから、誰も気に留める者はいなかった。
ただ、パックはずっと見張られているようで、あまりいい気がしなかった。
ココの屋敷に到着する。
ここにも護衛がいた。
護衛がパックを睨む。
ココが説明する。
「戦災孤児よ、ケアは私がやるわ。干渉は不要よ」
護衛は敬礼するが、パックを目で追い続けた。
パックは、屋敷を見て驚いた。
だが、中に入るともっと驚かされた。
使用人たちが整列し、ココを迎える。
マント、上着、鞄を、それぞれ受け取る人間がいた。
パックの上着も受け取りに来たが、パックは断った。
だが、トールの形見のサバイバルナイフだけは、さすがに屋敷の中まで持ち込むのは無理だった。
使用人は受け取ったサバイバルナイフを見てギョッとする。
トールの刻印が入っていた。
使用人は刻印にナプキンをかけて、丁重に保管した。
すぐさま執事長に報告が入る。
執事長の細い目が開く。
執事長がココに耳打ちする。
執事長はココの話を聞いて軽く頷き、静かに下がった。
執事長と使用人たちは“ココ側”の人間だった。
だが、屋敷の門にいる護衛は違った。
教団側で、ココの監視が裏の任務だった。
パックは、カトラリーがずらりと並ぶ席に案内された。
そして、立体的に折られたナプキンをまじまじと見つめていた。
パックの様子を見ていたココが、昔の自分と重なった。
パックに優しく語りかける。
「私の真似をすればいいわ」
「分からなかったら聞いて」
そう言ってナプキンを解いて見せ、膝に乗せた。
執事長には、帰ってきたココが、同年代の友達を連れてきたように見えた。
そして、“一人の女の子”になっているのを感じて、微笑ましく思った。
やがて、料理が運ばれてくる。
パックはココのやり方を見て、食べ始める。
だが、サバイバルナイフで直接食べる癖が出てしまう。
ナイフで刺し、そのまま口に運ぶ。
それを見た全員が目を丸くした。
それぞれが顔を見合わせた。
——空気が緩む
食卓に笑顔が溢れた。
温かい湯に浸かり、部屋に通された。
ふかふかのベッドに座る。
昨日までは、アーラの腹に寄りかかり、翼に包まれて眠ったのを思い出した。
ベッドが広すぎて、その日はよく眠れなかった。




