第042話|ココ編【……どこにいるの?】
ココは瓦礫をどけながら、生存者を探していた。
だが、頭から離れない。
魔族は人間を食べない。
そんなはずはない。
——でも。
あの少年は、翼の魔族はリンゴが好きだと言っていた。
「……」
視界の端に、村人が倒れているのが目に入った。
ココは駆け寄り、首に手を当てた。
……すでに息はなかった。
爪の痕はあるが、確かに喰われた形跡は無かった。
パックの言葉を思い出す。
「……我を失ってる?」
「……なぜ?」
「……村を襲う理由は?」
考えても答えは出なかった。
だが、アーラは村人を助けていた。
「……私も、守られた」
パックと話がしたい。
会いたい。
気づけば、その思いばかりが胸に募っていった。
徐々に村人たちが戻ってくる。
すると、一人の子どもと大人たちが言い争いをしていた。
ココは目を凝らした。
その子どもは、アーラが咥えていた本人ではないか。
……胸がざわついた。
口止めをしなければ———
そう思った瞬間、ココは駆け出していた。
だが、遅かった。
子どもは魔族に助けられたと言い、大人たちはそれを信用していなかった。
そしてココが最も秘密にしたかった情報。
“魔族とともにいた少年”だった。
大人たちは
“ショックで混乱している”
そう結論づけようとしていた。
ココは葛藤する。
勇者としての立場。
地位や名誉のためじゃない。
憧れてきた勇者トール。
あの人のように、平和を守りたい。
……でも。
パックたちも守りたい。
「——っ」
ココは村人たちを制した。
「魔族は討伐しました。この噂が広まれば、混乱を招きます。」
「……くれぐれも他言しないように、お願いします。」
村人たちは勇者の言葉に納得する。
だが、はたして人の口はどこまで封じられるのか、ココには分からなかった。
ココは復興の手伝いの名目で、しばらく滞在することにした。
本当の目的は、パックたちと会うためだった。
北部地方はリンゴを名産とする村が多い。
リンゴの林の情報を集めた。
数日が経った。
だが、パックたちには会えなかった。
村から一番遠いリンゴ林に向かい、それを最後にするつもりだった。
リンゴ林に向かって、ココは馬を走らせる。
———リンゴ林
アーラの傷は少しずつ回復に向かっていた。
パックは傷を看ながら言った。
「……毒とか無くて、良かったよね」
だが、アーラが毒を吐く。
「そもそも、お前が助けるとか言わなければ、俺は怪我なんかしなかった」
パックが謝る。
「ごめんってば、木に登ってリンゴ採ってあげてるでしょ?許してよ」
ヒートアップする。
「お前は“乗ってるだけ”だろうが。着地がしんどいんだぞ?」
「……ごめんってば……」
パックが溜め息をついた。
アーラがピクリと動いた。
「小僧、馬に乗った人間がこっちに向かっている」
「行くぞ、準備しろ」
パックは顔を上げた。
急いで背に乗る。
———そして、二人は飛び去ってしまった。




