第039話|ココ編【……こいつ……速いっ】
アーラが不時着する。
「———っ!」
負傷した脚に激痛が走り、倒れ込んだ。
肩で息をしている。
(だが、小娘のおかげで助かったな)
パックが青ざめる。
「……けっこう……深い……」
「……アーラ……ごめん」
助けた子どもは腰が抜け、訳が分からないといった様子だった。
パックが近寄る。
「……もう、大丈夫だよ」
子どもは少し後ずさり、何度も頷いた。
パックが呟く。
「……あの娘、大丈夫かな」
「アーラ、“見える”?」
アーラは息を切らしながら言った。
「……そんなに、こき使うな」
「ちょっと待ってろ」
アーラがスキャンすると、追ってきていた四足魔族たちの音は消える寸前だった。
だが、村の奥に四足魔族たちよりも“重い音”が、小娘に近づいているのを感じ取った。
「———群れの長か?小娘に近づいている」
パックは目を見開く。
「———!!」
アーラが制止するよりも先に、パックは駆け出していた。
アーラは溜め息をついたが、それ以上動けなかった。
「……無理するなよ、小僧」
助けた子どもは、少しずつ状況を把握して、自分の上着でアーラの傷を押さえた。
———
ココは遠吠えのした方向を警戒していた。
「この気配……群れの長?」
「さっきのようには、いかないかも……」
先ほどの個体とは違い、その気配はゆっくりと近づいてきていた。
禍々しい気配が建物の裏まで来ているのがわかった。
建物の角から“それ”が、ゆっくりと姿を現した。
———そして違和感。
もう一つの頭。
二つの頭を持つ四足魔族が姿を現した。
ココが呟く。
「……おぞましいわね」
「……だけど、倒させてもらうわ」
———二頭魔族の先制攻撃。
一瞬だけ、足元に魔法陣が浮かんだ。
二頭魔族の体がわずかに光った。
ココが驚く。
「———魔法?」
直後、
二頭魔族の残像が残る。
近くの木に爪跡が残る。
ココが咄嗟にオーブを構える。
オーブが翠に輝く。
——突風
ココが左に飛ぶ。
その瞬間、マントが切り裂かれる。
「———!!」
ココの立っていた辺りに二頭魔族が着地する。
「———身体強化魔法。……速い」
ココは呟きながらオーブを構える。
オーブが光を吸い込み漆黒へと変化する。
二頭魔族の視界を奪った。
ココは追撃しようとオーブを構えた。
その時だった。
光を奪ったはずの二頭魔族が、ココの位置に飛びかかってくる。
「———!!」
だが、わずかに攻撃が外れる。
オーブが翠に輝く。
ココが吹き飛び、距離を取る。
どうやら、匂いでおおよその位置を把握しているようだった。
「……驚いた。時間切れね」
二頭魔族の目に光が戻る。
「———光を奪うのは無意味」
オーブが鮮やかな青に輝く。
大気と大地が乾いてゆく。
足元を凍らせる。
——氷魔法発動の瞬間。
二頭魔族が消え、地面に氷だけが残る。
「———っ!!」
オーブの色は翠。
——突風
視認できない爪が、ココを切り裂こうと迫る———




