第037話|ココ編【……小僧、俺が人間に見られるということ……分かってるか?】
ココの屋敷に教団の使者が訪れる。
使用人が足早にココの部屋に向かう。
ノックの間隔が短くなる。
「ココ様、教団の使者が———」
言い終わる前にココが返事をする。
「わかったわ、今行く」
北東部の村に、魔族出現の報が入る。
ココがマントを羽織る。
「馬を準備して」
執事長が整った動きでココのオーブを差し出す。
「……どうか、お気をつけて……」
ココが笑顔で返す。
「……ありがとう、行ってくるわ」
———上空
アーラの目が細まる。
「既に人間の集落が襲われている……小型だが、数が多いな……」
(動きが速い……四足……か)
はるか前方の村から黒煙が上がっていた。
パックに緊張が走る。
「もう……村が……」
アーラが再度スキャンする。
(屋根の上に、小さい人間がいるが……小僧に言うと、助けるとか言いかねんな……)
(しかし、黙っておくと後が面倒だ……どうする?)
「……」
アーラは小さく溜め息をついた。
「……小さい人間が一人、逃げ遅れているようだが、どうする?」
パックが焦る。
「えっ、まだ人が!?……行かなきゃ」
アーラがまた溜め息をつく。
「魔族の動きが速い。人間ではすぐに追いつかれる」
「かといって、俺が助けるわけにはいかない」
「……どういうことか、分かるな?」
「……」
パックは顔を上げた。
「……それでも、助けなきゃ」
アーラはそれ以上何も言わず、覚悟だけ決めた。
「……向かうぞ」
パックはアーラの覚悟に気づいていなかった。
「うん、お願い」
少し旋回して、降下し始める。
村の上空に入った。
アーラは再度音を聞いた。
(他の人間は……もうダメだな……音がしない)
(あの小さいのが、唯一の生き残りか)
(……弱っては、いないようだ)
(……さて、どうする……子どもとはいえ、二人を抱えるのはキツイな……)
(かといって、小僧は置いてはいけない)
(……やるしかないか)
アーラが高度を下げる。
すると“四足の壊れた魔族”に気づかれた。
追ってくる。
一頭が追い始めると、別の四足の魔族も追い始める。
三頭、四頭とアーラの後方に四足魔族が集まってくる。
脚の速い一頭が飛びかかる。
アーラの足に鋭い爪が襲いかかる。
——爪が、空を切る。
しかし、四足魔族は予想よりも速かった。
爪を立て、地面を力強く蹴って加速してくる。
唾液を飛ばして鋭い牙を剥いていた。
そして、赤く変化した目に正気の色は無かった。
パックが焦る。
「こいつら……速いっ」
「アーラ!!」
アーラの目が鋭くなる。
「黙ってろ!!」
「そろそろだ……パック、覚悟しろよ?」
アーラが口を開ける。
屋根の上の子どもが、アーラを見て悲鳴を上げた。
大きく開かれたくちばしが、
空気を裂いて迫る———。




