第036話|ココ編【……また、会えるかな……】
ココは小さくなる少年の背中を眺め、しばらく立ち尽くしていた。
ふと、我に帰る。
そして、破壊された家を見て回った。
倒壊した家からは、火の手が上がっていた。
ココは生存者を探した。
倒れた村人に声をかけた。
だが、冷たくなった体から返事はなかった。
ココは胸に手を当て、祈りを捧げた。
そして奥歯を噛み締める。
健闘はした。
だが——課題の残る戦いだった。
ココは馬を降りた場所まで戻る。
すると、そこにはまだ愛馬が待ってくれていた。
「——あ」
ココは早足になった。
そして駆け出した。
ココは愛馬の首を抱きしめた。
「待っててくれたのね、ありがとう……」
ココは馬の首を、そっと撫でた。
「……怖かったでしょう?」
馬は一度だけ、いなないた。
———王都
ココは帰還した。
門兵に敬礼され、王都に入った。
緊張の糸が緩む。
黙って考え込んだ。
(あの人は敵じゃない……むしろ……)
(私を……助けようと……)
(あの魔族も……私たちを背中で守った……)
南西部の村での戦い以降、ココは図書館に通っていた。
魔導書を漁る日々。
だが、複合魔法についての記述は見つからなかった。
古代魔法、“精霊の理”についての記述も、詳しいものは見つからなかった。
———数日後
ココは行きつけの道具屋に足を運んだ。
その店の主人は老齢で、穏やかな人柄で知られていた。
ココはその主人からとても可愛がられていた。
「この前の戦いで、不思議なことがあったの」
ココが詳細を話すと、主人は白く長い髭を撫で、静かに語り始めた。
「わしの村にはな、昔の御伽話があるんじゃよ」
「精霊を使役する戦士と、ひとりの魔導士が、不思議な力を使い、世界を平和に導いた──そんな話じゃ」
ココは思わず身を乗り出した。
“不思議な力”という言葉に反応する。
自分たちの出来事とは違うはずなのに、心の奥で妙に重なった。
「その戦士と魔導士は、互いを友として認め合い、不思議な力で戦争を止めようとした」
「二人は困難を乗り越え、世界を平和に導いたんじゃ」
ココは、御伽話の不思議な力と、魔導書に書かれていた古代魔法“精霊の理”の記述を思い浮かべる。
——そして先日の複合魔法の謎が御伽話の中に溶けていく。
「……面白かったわ、ありがとう」
ココの目に希望の光が灯る。
謎の“答え”に、ほんの少しだけ近づけた気がした。
(……会って、確かめたい……)
———それは未知なる魔法への探究心なのか、好奇心なのか、ココ本人にもまだ分かっていなかった。




