第034話|ココ編【……不思議だわ……やれる気がする】
二人は手を握った。
体が共鳴する———
“共鳴”は確かに起きていた。
だが、あの時の感覚には届かない。
何かが足りない。
「……あの時みたいに、うまく重ならない」
——その時だった。
ココのオーブに、何かが吸い込まれるような感覚が走る。
次の瞬間、オーブが輝いた。
紅の炎。
翠の風。
二つの光は混ざり合い、渦を巻く。
経験したことのない輝きだった。
ココは直感で理解する。
——複合魔法。
ココは複数の属性を扱える稀有な才能を持っていた。
だが本来、魔法は複数の属性を同時に発動できない。
それが常識だった。
しかし——
パックとの共鳴が、その常識を覆す。
空気が震えた。
ココの翠の長い髪と二人のマントがふわりと浮いた。
足元に魔法陣が浮かび上がる。
魔法陣に火が灯る。
次いで風が魔法陣の周りを回転しだす。
その風が炎を巻き上げる。
炎は渦となり、巨大な火柱へと姿を変えた。
パックは手を繋いだままココを見た。
「これは……どういうことなの……」
ココが答える。
「私にも、まだ分からないわ……」
「……でも、一つ分かったことがある」
パックの目を見つめた。
「……あなたがいると、私の魔法が変化するってこと」
ココがオーブを掲げた。
その瞬間、オーブが輝く。
火炎竜巻がうねりを上げて顎の魔族に襲いかかる。
焼ける鱗。
そして真空の刃が焼けた鱗を切り刻んだ。
———咆哮。
だが、先ほどのような力強さは失われていた。
それは悲鳴に近かった。
だが、ここで不運が起きた。
顎の魔族が倒れ込む。
倒れ込んだ先は———
ココが作った“ぬかるみ”だった。
顎の魔族が転げ回る。
体表に付着した泥が、顎の魔族の鎧になってしまう。
激しい水分の蒸発により体表温度が下がる。
さらに、土の鎧が火炎竜巻からのダメージを防いだ。
顎の魔族の目に光が戻る。
ゆっくりと起き上がり、再び咆哮。
衝撃波とともに大地が震えた。
顎の魔族が瓦礫を咥える。
ココが咄嗟に叫ぶ。
「避けてっ!!」
二人は左右に避ける。
握った手が離れた。
二人が立っていた場所に瓦礫が飛んでくる。
ズズンという重い音。
土煙。
瓦礫が二人を分断した。
顎の魔族がココを睨む。
野生の勘が“少女を消せ”と告げているようだった。
———そして突進。
広い歩幅が、巨体を想像よりも速く動かした。
ココが構える。
オーブが翠に輝く。
自らに突風を浴びせる。
小柄なココが後ろに吹き飛ぶ。
くるりと回転して着地した。
だが、さらにパックとの距離が広がってしまった。
ココが呟く。
「———どうする?」
(私の単体魔法では威力が足りない……)
(——かといって、安易にあの人を戦闘に巻き込めば、危険が伴う……)
アーラがパックに音を飛ばす。
「小僧、動くなよ……お前が狙われる———」
そう言いかけたその時。
パックが走り出してしまう。
「———待てっ!!」
顎の魔族の目がパックを追う。
瓦礫を咥え、パックに向かってそれを飛ばした———。




