第033話|ココ編【……私の心を、揺らさないで】
パックが横に立ち、顎の魔族を共に警戒する。
「……血が……傷は?」
ココは答える。
「傷は浅いわ。それよりも、被害が……出てしまったわ」
「……」
アーラが唸った。
「耳を塞げと、小娘に伝えろ」
パックが頷く。
「アーラが何かやるみたいだ」
「耳を塞いで!」
ココは戸惑いながら耳を塞いだ。
アーラが口を大きく開く。
その瞬間。
———ギィィィィン!!
耳を塞いでいても貫通してくる“キーン”という音が、二人の鼓膜の奥まで震わせる。
顎の魔族が怯む。
ドドドン、とたたらを踏んだ。
顎の魔族は耳から出血する。
アーラが舌打ちする。
「……致命傷……まではいかんか……」
「———っ!!」
すかさずココが動いた。
オーブの色は、“青”
———静寂
大気が乾き、足元の地面も乾いてゆく。
顎の魔族の足元を“ぬかるみ”へと変えた。
———ゆっくりと足が沈んでゆく。
顎の魔族が泥に埋まり、もがいている。
「……ただの足止めよ、問題は解決していないわ」
「……それと……あなた、あの化け物と話せるの?」
パックはココの目から視線を外した。
「……うん、話せる」
「……教団には、黙っていて欲しい」
ココは驚いた表情を隠せていない。
「……私は勇者よ、教団側かもしれないのに、なぜ私に話したの?」
パックが優しい目になる。
「……君を守るために、必要な情報だと思った」
「———っ!!」
ココの胸に衝撃が走る。
手が震える。
「……守ってもらわなくて大丈夫よ、私は祝福を持ってる」
パックが悲しい目になる。
「……トールも持っていたよね……でも……」
「教団には何か秘密がある。そうじゃなければ、トールが死ぬはずはなかったんだ」
「…………」
ココは半信半疑で聞き返した。
「……本当に教団が……トール様を?……」
アーラが会話を遮る。
「おい!話は終わりだ。出てくるぞ」
パックが顎の魔族を見る。
「———っ、来るっ!!」
顎の魔族は、頭部の重量が極端に大きい。
そのバランスは太い尻尾で調整されていた。
そのため、手は退化してしまっている。
ぬかるみから出るのに手間取っていたが、ようやく足掛かりを得て、脱出しようとしていた。
パックとココは距離を取った。
ココは思い出す。
図書館の魔導書の記述、幻の古代魔法。
そして、前回の戦闘で発動した謎の魔法。
試してみたくなる。
ココがパックを呼ぶ。
「ちょっと、こっちに来て」
パックは顎の魔族から目を外さず従う。
「何をするつもり?」
ココはあの時、パックの身体に触れた瞬間を思い出す。
共鳴するような感覚。
「私の手を握って」
そう言って手を差し出す。
パックは一瞬驚くが、ココの目を見て迷いが消える。
「……わかった」
不思議な感覚にとらわれる。
二人の身体が“共鳴”する———。
アーラも二人の音が一つになるのを感じ取る。
「なるほど、あの時の魔法か———」




