第031話|ココ編【……攻撃が……破られるっ……】
———二度目の咆哮。
腰の鞄からオーブを取り出す。
わずかに残る血痕が目に入った。
そして、すぐに向き直り戦闘準備に入る。
ドドン、と村の外れから重い音。
木が軋む。
そして、大地が揺れる。
「……かなり、大きいわね」
「……いけるの?」
「———っ、行くしかないっ!!」
———その時だった。
正面の木々が弾け飛ぶ。
そして……
巨大な顎が姿を現した。
その顎が20メートルほどの木に噛みつく。
メキメキという音を立てて、木を噛み砕いた。
現れたのは、
15メートルはあろうかという、顎の魔族。
赤い瞳は我を失い、焦点が定まっていない。
頭蓋骨を象徴するかのような、巨大な顎。
太く長い尾。
それらを支える、太く強靭な脚。
獲物を押さえつけるためだけの機能しかない鉤爪。
そして、巨大な顎を支える太い喉から、再び咆哮が爆ぜる。
ココはその波動で吹き飛びそうになる。
すぐさま体勢を立て直す。
視界の端に崩れた家屋。
その瓦礫に足を挟まれ、もがく村人がいた。
その家屋からは火の手も上がっていた。
———ココの先制攻撃。
オーブが鮮やかな青に染まる。
———一瞬の静寂
空気が乾き、足元の土も乾いてゆく。
失われた水分が顎の魔族の足元に集まってゆく。
オーブが光る。
一瞬にして顎の魔族の足が氷に覆われた。
———動きを止めた。
ココが村人に駆け寄る。
「——大丈夫っ?」
歪んだ顔で村人が答える。
「———動けないのっ、助けてっ!逃げられないっ!!」
ココは村人の肩を掴んだ。
「落ち着いて!今助ける」
オーブが“金”に輝く。
村人の足元の土が盛り上がり、瓦礫と脚の間に隙間ができた。
もがく顎の魔族。
次の瞬間、氷に噛み付いた。
———氷にヒビが走る。
ココの氷が砕け散った。
さらに、顎の魔族が瓦礫を咥える。
それをココに向かって飛ばした。
———瓦礫が迫る。
村人が悲鳴を上げた。
ココが反応する。
「———っ!!」
オーブが“金”に染まる。
石の壁が立ち上がる。
だが、瓦礫を弾くには時間が足りなかった。
飛んでくる瓦礫の質量が上回る。
ドゴン、と岩が砕ける音。
土煙が舞う。
「ひぃぃぃぃっ!!」
声を上げたのは村人だった。
咄嗟に村人を庇ったココの頭から、一筋の血が流れていた。
かばった腕にも血が滲んでいた。
「———大丈夫?一人で、逃げられる?」
村人は歪んだ顔で何度も頷く。
村人は這うようにして逃げてゆく。
顎の魔族の視線が、動くものに釣られる。
鼻息が荒くなる。
体勢が沈む。
本能が脚を動かそうとしていた。




