第029話|ココ編【……あの人の目……トール様と同じだった……】
パックは顔に風を受けながら話しかけた。
「……あのさ、よく覚えてないんだけど……あの子は無事なんだよね?」
アーラは前を向いたまま答えた。
「あの小娘か?……大丈夫だ、心配ない」
「……それよりも、お前と小娘の音が一つになって、とんでもないことになった」
「……覚えてないのか?」
パックが不思議そうに尋ねた。
「……とんでもないこと?」
アーラの目が鋭くなる。
「……ああ、正直あれは驚いた……あんな魔法は見たことがない」
「……まぁ良い、いずれまた会うことになるかもしれん」
パックは不思議そうに呟いた。
「……とんでもない、魔法?」
———王都
“勇者ココ”の凱旋パレード当日は穏やかな快晴だった。
金で装飾された馬車には、教団のシンボルである鐘がデザインされていた。
ココは、その馬車の一段高い椅子に座って、笑顔で手を振る。
民衆は、その姿に歓声を上げた。
子どもたちは目を輝かせて、ココの名前を呼んだ。
ココは笑顔で手を振りながら、ふと思い出す。
———あの少年の言葉。
(……君を、守る)
その時のパックの表情がフラッシュバックする。
尊敬する勇者と重なる。
ココは自分が手を振っていることを忘れた。
歓声も遠くなる。
「———ココ様」
呼ばれて、我に帰る。
ココは笑顔のまま、慌てて聞き返す。
「……ごめんなさい、聞こえなかった。なに?」
付き人が答える。
「パレードがそろそろ終わります。ご準備を」
ココは気を取り直し、民衆に手を振った。
「……わかったわ」
———教団本部
銀の聖杯をくるりと回し、香り高いぶどう酒を一口含む。
「……あの娘、なかなかの人気ですね」
側近は静かに答える。
「……はい、寄付金も増えております」
聖杯の装飾に光を反射させる。
「……勇者は儲かる」
「……まだ未熟なのも良い……」
「討伐も問題ないようだし……」
「……魔族の数を増やしなさい」
側近が焦る。
「……はい。……ですが、死んでしまっては元も子もないので……」
聖杯をコトリと置く。
「……死んだとしても、金は集まる」
「……どうとでもなる」
側近は、大きく喉を鳴らした。
「…………はい」
勇者の人気が高まるほど、その状況は過酷さを増していく。
側近は報告書を、手汗で濡らした。
愛娘と同年代の勇者に、感情移入しないように、必死に、固く、まぶたを閉じた。
———大陸南西部、とある村
子どもたちが、かくれんぼで遊んでいた。
茂みに隠れる子ども。
靴が硬いものに当たる。
「———?この骨、なんだろう……」




