第028話|ココ編【……人間は、どのくらいで死ぬんだ?……】
パックの血は止まりかけていた。
アーラはパックの音を聞く。
その音は睡眠中と大差はなく、弱った音は感じられない。
だが、アーラには“人間の傷”がどの程度で危険な状態なのかが分からなかった。
辺りはすでに夜になっていた。
前方に人間の集落を発見する。
アーラはトサカでスキャンした。
家の外に出ている人間はいなかった。
「……小僧を人間に診させるか」
アーラは音もなく静かに降下する。
村の中央あたりの“見つけてもらいやすい”場所にパックを置いて飛び去る。
そして、村から少し離れた位置に降りた。
そこからトサカで音を出す。
人間に聞こえない周波数で、出力は少し強めだった。
すると、村の家の窓が振動する。
異変に気づいた村人たちが家から出てくる。
そして、パックが発見された。
数人の大人の輪郭が、パックを家の中へ運び込んだ。
戸が閉まる音。
人間たちがパックを保護したのを“音”で確認した。
「……死ぬなよ、小僧」
そう言って飛び去った。
——数日後。
パックは村人の介抱で回復に向かっていた。
この出来事が、アーラの計らいだということも分かっていた。
外に出られるまで回復すると、パックは村の外れへ足を運んだ。
少し開けた場所。
音を運びやすい場所だった。
パックが、アーラの名を呼ぶ。
その“音”を、“お節介な風”が運んだ。
そして、アーラの元へ。
アーラはそれを受信する。
今度はアーラが、音を返した。
パックがその声を聞く。
二人が再会するのに、時間はかからなかった。
パックは走れるまで回復していた。
「アーラ!ありがとう。君のおかげだよ」
そう言って抱きつく。
満更でもないアーラ。
「……看病が面倒だったからな、村があって助かった」
パックは肩をすくめる。
「……すぐそういうこと言うよね」
「お願いがあるんだけど……村の人にお礼がしたいんだ」
「……」
アーラは溜め息をつく。
「……リンゴの場所なら分かるぞ」
パックが親指を立てる。
「それ!良いね。連れてって」
「……乗れ」
アーラはそう言って背を低くした。
パックは慣れた動作で、その背に飛び乗った。
「落ちるなよ、小僧」
翼が広がる。
助走から、力強く大地を蹴る。
大きく羽ばたき、大空へ飛び立った。
パックが風を受け、目を閉じる。
「……やっぱり、気持ちいい……」
「……」
アーラは背に乗る“荷物”が戻って、ホッとしていた。




