第027話|ココ編【……彼は……何者?……無事でいて……】
ココが倒れたパックに触れた。
その時だった。
ココのオーブに変化が起きた。
ココがその異変に戸惑う。
アーラも、オーブが放つ異変に警戒した。
オーブの色が変化する。
———“慎重な闇”の漆黒。
オーブが光を吸い込む。
———“冷静な水”の青。
オーブが静かな湖面を映す。
———“誇り高い火”の紅。
オーブが燃え盛る炎を映す。
———“寡黙な土”の金。
オーブが脈動する大地を映す。
———“お節介な風”の翠。
オーブが竜巻を映す。
———“優しい光”の白。
オーブからまばゆい光が溢れ出した。
“壊れた魔族”の足元に古代文字が浮かび上がる。
それは魔法陣へと姿を変えた。
その瞬間。
魔法陣から、巨大な円柱の光が天へと伸びた。
壊れた魔族が光に包まれる。
辺りが真っ白になった。
———精霊の理が、下された。
目が慣れてくると、そこにいたはずの壊れた魔族は、跡形もなく消えていた。
ココは唖然とする。
「……なに……今の魔法……」
そして、パックに触れていることに気づいた。
パックは気を失っていた。
「……」
背後に気配。
アーラがパックを優しく咥えた。
アーラの金色の目が、ココに向けられる。
何かを伝えるように少し唸ると、そのまま飛び去ってしまった。
———ココの屋敷
ココが家に戻ると、使用人達が飛んでくる。
「……ココ様……よくぞ、ご無事で……」
荷物を受け取る者。
マントを受け取る者。
上着を受け取る者。
皆が涙を流していた。
執事長が尋ねる。
「急ぎ、食事になさいますか?」
ココは笑顔で言った。
「そうね……お風呂に、しようかな」
勇者は、一人の少女に戻っていた。
———王都中央図書館
ココは図書館に来ていた。
後日予定されている、凱旋パレードまで、まだ日にちがあったので、あの時の魔法について調べていた。
オーブを手に取る。
微かに残る血液の跡を見つめる。
「……あの魔法、何だったんだろう……」
文献を漁る。
一冊の古い魔導書に目が留まる。
開くと、気になる記述を見つけた。
席に戻り、じっくりと読む。
古びた頁の端に、かすれた文字が残っていた。
幻の古代魔法——
精霊の理
精霊と心を通わせる者と、
精霊に選ばれた者。
二つの魂が揃う時のみ発動する。
ココの手が止まる。
「……二つ?」
脳裏に浮かんだのは、戦場で出会った少年の姿。
少年の身体に触れた瞬間、オーブが反応し、発動したのを思い出した。
そして少年が残した言葉。
———「君を、守りたい」
彼の眼差しが脳裏に焼き付いている。
そして呟いた。
「あいつ、どうしてトール様と、同じ目を……」
「無事……だと良いけど……」
気づくとオーブを胸に抱いていた。
本を戻し、図書館を後にした。




