第018話|トール編【俺みたいになるって、嬉しかったぞ】
「トーーールッ!!」
崖の上から放たれた、パックの叫びは戦場にこだました。
最初に反応したのはトールだった。
「———っ!!」
そして、戦場の視線はパックに集中した。
サンデルは身を乗り出した。
「あれは……祝福持ちの子どもか」
——その時だった。
上空から急降下する“影”
“翼の魔族”だった。
くちばしを開き、パックに迫る。
そして、パックに噛みつき飛び去る。
だが、その顎の力は赤ん坊を抱く時のそれだった。
パックは一瞬硬直した。
混乱する。
その時、翼の魔族が話しかけた。
「逃がしてやる。暴れるな、落ちたら拾ってやらん」
パックは思い出す。
「あの時の……魔族……」
「トール!!トールも助けて!!」
翼の魔族はトールを見た。
「二人は無理だ、諦めろ」
(雷のやつ……急に弱くなった)
(……何かされたな)
(まあ良い、小さいのだけに用がある)
トールはその光景を見て瞬時に理解した。
ひと芝居うつ。
「あの少年を助けろ!」
「魔族に殺される!」
遠目だったが、一瞬パックと目が合った。
音が消える。
不思議な感覚。
守りきった。
勝った。
(パック……“強く生きろ”)
(……翼の魔族、頼んだぞ)
……そして、心に穴が空いたような感覚。
パックの言葉を思い出す。
「トールみたいになるんだ」
トールは静かに目を閉じた。
サンデルが頬の傷に触れ、トールを煽る。
「……もう、あの子どもは助からないでしょう」
「我々が助ける義理もない」
「……それに、楯突いた祝福持ちは必要ない」
トールは低く吠えた。
「……外道が」
同時に、パックの無事を噛み締める。
「サンデル、貴様、魔族たちを召喚しているな?」
サンデルの動きが止まった。
「何故その事を?……」
トールは確信した。
「やはりか……寄付金のためか」
指輪を弄りながら答えた。
「……あなたが知る必要はありません」
トールは眉間に皺を寄せた。
「全て仕組まれていた、というわけだな」
「……」
ちらりとトールを見下した。
トールが続けた。
「祝福も、魔族も、金も……全部貴様の舞台装置か」
サンデルは話を変えた。
「さっきは冷や冷やしましたよ。私の祝福は範囲が狭いのでね……」
トールは目を細めた。
「……やはり貴様の仕業か」
サンデルが両手を広げた。
「祝福を消せるんですよ……私は」
「あなたにしたようにね……」
「だけど、近づかないといけない……」
「これが面倒でね……」
「では、話はここまでです。」
「さようなら。片腕の勇者……」
サンデルは再度頬の傷に触れ、苛立った。




