第149話|ココ編【……やっと分かった……】
アーラは崩壊した教会の横へと降り立った。
草むらから、ピットを咥えて持ち上げた。
「……置いていかれた」
ピットは舌を出して、チロチロ振った。
アーラは鼻を鳴らした。
「……まぁ、あの場は仕方ないな」
ピットを背に乗せて、飛び立った。
「あそこにいるって、よく分かったね……擬態は完璧だった筈だけど……」
ピットは舌をチロチロ振った。
「ん?……あぁ……俺は目だけで見てるわけじゃないからな」
「それより急ぐぞ、掴まれ」
「……掴まる……」
ピットはアーラが巻いていたパックのマフラーに噛みついた。
………………
…………
……
——馬上
パックは城門を抜けて、大きくため息を吐いた。
そして後方の空を見上げた。
城門に一度視界を遮られたせいで、白金の竜はこちらを見失っていた。
「……」
パックは白金の竜を見つめた。
「あの竜……黒い竜とツガイなんだって……」
「……」
ココは前を向いたまま、パックの言葉に黙って耳を傾けた。
「……黒い竜は、正気を保ってるんだ……」
「——でも、白い竜は……」
パックは拳を握りしめた。
「……そう」
ココはひと言だけ、返した。
ココたちは、城門から離れ、開けた場所で止まった。
馬から降りて、馬を城内へと走らせた。
パックとココは、手を繋いだ。
「……」
二人は少し見つめ合ったあと、白金の竜を見た。
白金の竜は二人に気づいて向かってきていた。
そして、黒銀の竜もその後を追ってきた。
「……」
ココが口を開いた。
「あの不思議な魔法……私ね、考えたの……」
「……」
パックは黙って、ココの言葉に耳を傾けた。
「あの魔法は……倒すためのものじゃない……」
「……うん」
二人は繋いだ手に力が入った。
「——救うためにある」
二人の声が揃った。
その時、ココのオーブに六精霊が入り込んだ。
オーブの中心が光を放った。
その光は色を変えながら輝きを大きくしていった。
“お節介な風”の翠。
“冷静な水”の青。
“誇り高い火”の紅。
“寡黙な土”の金。
“慎重な闇”の漆黒。
“優しい光”の白。
その光は混じり合い、渦を巻いた。
白金の竜の足下に、巨大な魔法陣が浮かび上がった。
その魔法陣から、眩い光の柱が現れた。
辺りが暖かな光に包まれた。
その光は、パックとココだけでなく、黒銀の竜やアーラたちをも包み込んだ。
黒銀の竜は故郷と似た景色の場所に立っていた。
視線の先に、白金の竜がいた。
白金の竜の優しく包み込むような目は、黒銀の竜がいつも見ていた目と同じだった。
白金の竜の翼の陰には、小さな子竜が寝息を立てていた。
白金の竜は黒銀の竜を見て、目を細めた。
「——!?」
黒銀の竜は震えた。
黒銀の竜の目尻から溢れた雫は、結晶となり、キィィィンと音を立てて大地に転がった。
アーラとピットは少し離れた場所から、竜たちを見守っていた。
ココは光の先に立つ人物を見て震えた。
その人物はココを見て、口髭を上げた。
ゆっくりと近づいてきて、高い高いをして、くるりと回った。
大きな手でココの頭を撫で、もう一度口髭を上げ、光の先に歩いていった。
ココは大粒の涙を流し、袖で顔を拭った。
ココが手を前に出し、背中を追おうとすると、視界の端にパックが立っていた。
パックの視線の先にはトールがいた。
「——!?」
ココは足を止め、二人を見守った。
トールはパックの頭をくしゃっと撫でた。
そしてパックの前にしゃがみ、拳を突き出した。
パックは肩を震わせて、拳を合わせた。
トールは優しく笑い、霞んで風になっていった。
ココには別のものが見えていた。
霞んで風になったトールが、パックと重なっていくのを見た。
「……」
ココは胸の前で両手を握りしめていた。
光に包まれた者たちは、目の前が真っ白になり、眩しさのあまり瞼を閉じた。
そして、ゆっくりと目を開けた。
「……」
白金の竜はいなくなっていた。




