第143話|ココ編【白い方を狙え!】
——戦闘開始前、上空
白金の竜が王都に近づいていた。
そして黒銀の竜がその後を追った。
王国軍は城壁の上から大型の連弩を、聖騎士団は城壁前に投石機を構えていた。
城壁上では、数人がかりでハンドルを回して大型の連弩の弦を引いた。
一度に数本の大型の矢が装填された。
照準は飛来する竜二頭へ向けられた。
まもなく射程内に入る。
「……」
——沈黙。
「……」
測量士が合図の旗を振った。
指揮官が銅鑼を鳴らした。
——ザァッ!
大型の連弩から、矢が一斉に放たれた。
前方の空が黒く染まった。
城壁前では、聖騎士団が投石機のロックを外した。
巨大なシーソーのようなアームが跳ね上がり、百キロを超える岩が猛スピードで飛ばされた。
前方を飛ぶ白金の竜へ、無数の矢と岩が襲いかかった。
白金の竜はただ前に進んだ。
同胞を助けるために。
「——っ!?」
黒銀の竜は白金の竜の前へ出た。
そして首を後ろに下げ、口を開いた。
頭を前に出すと同時に、喉の奥から炎が噴き出した。
——ゴォォォォッ!
一斉に飛んでくる矢を焼き払った。
数本が抜けてくる。
黒銀の竜は自らの体を盾にして、白金の竜を守った。
鱗に当たった矢は弾かれたが、そのうちの数本が隙間に深く刺さった。
「——っ」
次いで岩。
それらも黒銀の竜が体で受け止めた。
鱗が割れ、剥がれ落ちた。
ピィィィィィ……
白金の竜が鳴いた。
次の瞬間、白金の竜の口から火球が放たれた。
城壁前に展開していた一台の投石機に直撃した。
投石機は砕けて燃えた。
続けて黒銀の竜の攻撃。
角に稲妻が迸った。
次の瞬間。
落雷。
遅れて轟音。
城壁上の連弩二台に直撃した。
連弩は砕け散り、灰になった。
指揮官は黒銀の竜の動きを見て眉をひそめた。
(……庇った……?)
城壁の左右から張り出した砦の連弩は射撃準備が整っていた。
指揮官は、砦からの第二波で白金の竜を狙うよう伝令を出した。
そして白金の竜へと連弩の照準が合わせられた。
地上でも投石の第二波の準備が整い、合図の旗が上がった。
測量士からはすでに射程内の旗が上げられていた。
指揮官が撥を握りしめた。
そして、第二波の銅鑼が鳴らされた。
——ザァッ!
同時に白金の竜は地上の投石機へ火球を放った。
だが、白金の竜は自らへ向けられた攻撃を見ていなかった。
白金の竜へ左右から矢の雨が、地上からは岩が迫る。
黒銀の竜は白金の竜の右側の矢を焼き払い、岩を体に受けた。
二度目の岩のダメージが鱗を砕き、ずしりと内臓まで響いた。
白金の竜は右から抜けてきた矢と、左からの矢を浴びた。
鱗の隙間に、無数の矢が深く刺さった。
ピィィィィ……
白金の竜が鳴いた。
そして黒銀の竜の口角から血が滴り、風に飛ばされ赤い霧となった。




