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第142話|ココ編【……まだ、遠い……】

——教会周辺


——ドォン……


投石機から飛ばされた岩が地面に落ちる音が響いた。


デズモンドの長男は声を張り上げた。


「戦闘は始まっている」


「逃げ遅れた住民がいないことの確認が済んだら、我々も退避する」


「ハッ」

捜査員たちの声が揃った。


デズモンドの長男は教会の方を向いた。

(……ココ殿、避難はあらかた済んだ……あとは任せます……)


——教会


王都の城壁内に、広大な公園が広がっていた。


その中心に、教団の象徴である教会が建っていた。


ココは教団本部がある教会へと向かっていた。


キィィィィ……


ココは教会の入り口の扉を開いた。


吹き抜けの空間に扉の軋む音が響き渡った。


見上げると、吹き抜けの上に、外へ開けた鐘楼が見えた。

教会のシンボルである鐘が、その中央に吊るされていた。


ひんやりとした空気が、ココの肌をピリピリと突いた。


ココは中へと足を踏み入れた。


静まり返った空間に、足音だけが響いた。


「——どちら様ですか?」


広間の奥から柔らかい声が響いた。


——ドォン……


外からの戦闘音が、少しくぐもって広間の中に響いた。


「……」

ココは鞄からオーブを静かに取り出した。


奥から足音が聞こえた。


薄暗い広間に現れたのは——


司教のサンデルだった。


そして複数の足音が響いた。


サンデルの両脇に近衛兵。


サンデルを守るように前に出たのは、術士隊の“滅”・“壁”・“静”の三人。


音が止んだ。


「——っ」


ココは喉を鳴らした。


唾液を飲み込む音さえも響きそうな静けさだった。


サンデルは目を細めた。


「……勇者ココよ……なぜここにいるのです?……迎撃に出なさい」


「……それと」


「……そのオーブはどういうつもりですか?……」


柔らかい声が広間に響く。


「……き」

ココの喉が詰まる。


「……ん?……」

サンデルが首を傾げる。


「……聞きたいことがあるの……」


「……何ですか?」


「……トール様を……殺したのは誰……」


「……」


サンデルの目がわずかに開き、両手を広げた。


「……報道を見たでしょう?……魔族に殺されたのです……」


「……魔族はどこから現れるの?……」


「……」


サンデルが数歩だけ前に出た。


術士隊三人の足が、じり……と広がった。


「……私が知るわけがないでしょう……」


サンデルはまた一歩、前に出た。


「……」

ココは無意識に片足を後ろに下げた。


「……骨……」


「……ん?……」


「……魔族の骨を、回収して……村に仕掛けている……」


サンデルの目がさらに開く。


「……何を言っているのか分かりませんが……」


サンデルがまた一歩、前に出る。


「……デズモンドをっ!」

ココは声を張り上げた。


広間にこだました。


「……殺した……」


ココの手が震えた。


サンデルが鼻を鳴らし、肩をすくめた。


「……報道されたでしょう……ウィリアム伯爵ですよ……」


サンデルはまた一歩、前に出た。


「……悪い夢でも観たのですか?……まだ幼いから……ふふふ」


サンデルはまた一歩、もう一歩、距離を詰めた。


……はぁ、はぁ、はぁ……

ココは手にじっとりと汗をかいていた。

額から流れる汗が、鼻の横を伝って床に落ちた。


そしてココは無意識にまた一歩下がった。


サンデルの目が細まった。

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