第140話|ココ編【……何で俺はいつもこう……】
「……マジか……」
ヘルはパックの話を聞いて言葉を失った。
王都へ帰る途中のヘルにとって、魔族が王都に迫っているという話は初耳だった。
「……あっぶねぇ……何も知らずに王都へ帰るところだったぜ……知らせてくれてありがとうな」
「……お願いがあるんだけど……」
「——断る!」
「……まだ何も言ってないじゃん」
「王都に連れて行ってくれって言うつもりだろ?……冗談じゃねぇ……死ぬつもりはねぇ」
「——ココが危ないんだよっ!」
パックが声を張り上げた。
「——っ!?」
ヘルは首を後ろに引いて喉を鳴らした。
「……勇者が危ねぇって……どういうことだよ?」
「……」
パックは目を伏せた。
「……今回の魔族は竜二頭なんだ……」
「……は?……竜ってあの……御伽話のやつか……?」
「……」
パックは頷いた。
ヘルはもう一度、喉を鳴らした。
ヘルは両手で頭を掻いた。
「……ったくよぉ……何でこうなるんだよぉ……」
「……でもよ……」
ヘルはアーラを見た。
パックもアーラを見た。
「アーラは別行動するんだ」
「……それと……もう一人というか、もう一匹というか……」
パックは近くの茂みを見た。
すると、擬態して隠れていたピットが顔を上げ、舌を出してチロチロ振った。
「——っ!?」
ヘルは身を引き、御者台から落ちそうになった。
「な……ななな……何だそりゃ!」
「……新しい仲間のピットだよ」
「——そうじゃねぇ!……違う、違う……そいつも一緒に行くのか!?」
「……うん」
ヘルは両手で頭を抱えた。
「……オイオイオイオイ……冗談だろ……王都に魔族引き入れたりしたら、処刑されちまう……」
ヘルはパックの顔を見た。
「……はぁぁぁぁぁぁ……」
そして肩を落とした。
「……何か作戦あんのかよ?」
「ピットは擬態ができるんだ」
「……それだけか?」
「……あとは、空を滑空できて……毒を持ってる」
「……毒って……門番殺す気かよ……」
ヘルは顎に手を添えた。
「……擬態……か」
「……分かったよ……乗れよ……何とかしてやる……」
「——ヘル!ありがとうっ!」
パックが御者台に掴まり、身を乗り出した。
「……ったくよぉ〜……とばすから掴まっとけ」
——ドォン……
その時、王都方面から大きな音が響いてきた。
アーラが王都の方を向いた。
「——始まったか」
「……」
アーラが反響音を捉えた。
「まだ、王都の手前で食い止めているようだな」
アーラは目を細めた。
「……人間どもは、岩を飛ばしているのか……」
「……」
気づくと、アーラは竜たちの方を心配していた。
アーラは鼻を鳴らした。
(……俺は、どこに向かおうとしている……)




