第139話|ココ編【考えることは、皆同じね】
——デズモンド邸
「——何だと?……ココ殿が?」
(……魔族の骨の件か……)
「すぐ行く、通してくれ」
デズモンドの長男は上着に袖を通し、屋敷の奥の倉庫へと向かった。
(……すぐにでも王都の外へと持ち出すつもりだったが……)
(……ココ殿に預けた方が良さそうだな……)
デズモンドの長男は、再度の保管庫襲撃に備え、魔族の骨を密かに屋敷の倉庫に移していた。
持ち運びやすいように腰袋に入れ、ココの元へと向かった。
ココは屋敷の玄関で、立ったまま待っていた。
「……」
デズモンドの長男が迎えると、ココは貴族式の挨拶をした。
デズモンドの長男も礼を返した。
「——この中に」
デズモンドの長男はすぐさま腰袋を差し出した。
「——!?」
ココは受け取り、腰袋の中を見た。
「……」
ココはデズモンドの長男を見て頷いた。
「……お願いがあるの」
デズモンドの長男の左眉が上がった。
「私が魔族を教会へと引きつけるから……教会周辺の住民の避難誘導をお願いしたいの」
「——!?」
「……」
デズモンドの長男は言葉を飲み込んだ。
「……」
ココは目を逸さなかった。
「……私は治安維持を預かる身……協力は惜しみません」
デズモンドの長男は口髭を上げた。
「——!?」
ココは目を見開いた。
その優しい笑顔がデズモンドと重なった。
「……どうか、ご無事で」
デズモンドの長男はココに向かって敬礼した。
「ありがとう」
ココは踵を返し、デズモンド邸を後にした。
デズモンドの長男はココの背が見えなくなるまで敬礼を続けた。
そして右手を振り上げた。
「——手の空いてる者を、避難誘導に回すよう伝えろ」
「教会周辺住民の避難誘導だ」
「私も現場に向かう。馬をっ!」
——上空
迂回して王都へ向かうアーラが、街道を進む一台の馬車を捉えた。
「……」
「パック、あの馬車に乗っている人間だが……あのヘルという奴だぞ」
「えっ!」
パックが身を乗り出した。
目を凝らすが、遠すぎて顔まで分からなかった。
「王都方面に向かってるね」
「王都に空から入るのは危なすぎるから、ヘルに頼もう!」
「降ろして、アーラ」
アーラは周囲に音を飛ばした。
返ってきた人間の輪郭はヘルだけだった。
「降りるぞ、掴まれ」
そう言って、アーラは降下した。
………………
…………
……
ヘルはあくびをして視界を滲ませた。
「……なんか嫌な予感がするな……」
独りごちたその時、地面に大きな翼の影が走った。
「——っ!?」
ヘルは驚いて空を見上げた。
「……」
見覚えのある翼の背に、見覚えのある少年が乗っていた。
「……嫌な予感……当たったわ……」




