第137話|ココ編【デズモンド……トール様……私に力を……】
「パックっ!?」
アーラは翼をたたんで急降下した。
視界の端に器用に体をくねらせて滑空するピットを捉えた。
「……」
視線をパックに戻すと、パックは両手両足を広げ、落下速度を抑えていた。
「——上出来だ」
アーラは目を細め、さらに羽ばたいた。
パックに追いつき、咥えた。
咥えたまま、森の木すれすれを飛び、上昇した。
パックを上空へ放り投げる。
「——わぁっ!」
パックが悲鳴をあげる。
そして、背中でキャッチした。
ぜー……ぜー……
パックは顔面蒼白で、息を切らしていた。
喉を詰まらせ、カラカラの口で唾液を飲み込んだ。
「——来てくれるって分かってても……無理……」
アーラはすぐに滑空するピットを見上げた。
「……大したもんだな」
そう言って、ピットに近づき、背中でキャッチした。
「……流石にあの高さは怖いね」
ピットは舌を出してチロチロと振った。
アーラは竜たちを見た。
竜たちはこちらに興味を無くし、王都へと向かって飛んでいった。
パックも竜たちを見た。
「……ココのところに行かなきゃ」
アーラは王都方面に向き直った。
「……後を追うのは危険だ……迂回して進む」
そう言って翼を傾け、旋回した。
「……だが、被害を食い止めるのは諦めろ」
アーラはパックを見た。
「お前一人で背負うな。街にいる人間たちに任せろ」
「……そして、ココと合流するのを優先しろ」
パックは拳を握り締めた。
「……うん」
——ココ邸
ココはデズモンドから贈られた菓子の山を、ただぼーっと眺めていた。
数日、ろくに食べ物を口にしていなかったため、目は窪み、頬はこけ、唇は乾いていた。
すると、教団からの早馬が訪ねて来た。
ココの屋敷内が慌ただしくなった。
執事長がココの部屋の扉をノックした。
「……」
再びノックしようとした手が止まった。
(……よりによってココ様がこんな状態の時に……)
執事長が、使用人を見た。
「……ミルクなど……すぐに口にできるものを……」
「……そうだ!……厨房の蜂蜜を全部持って来なさい!」
使用人は頷いて、早足で厨房へと向かった。
執事長は深呼吸をして再び扉をノックした。
すると、すぐに扉が開いた。
「——!」
執事長は目を見開いた。
衰弱したココが、戦闘準備を整えた姿でそこに立っていた。




