第134話|ココ編【お前がそうしたいと言うならば……我も、共に】
——アーラの救護所
アーラの傷はようやく癒えてきた。
飛べるようにもなった。
だが、完治とまでは言えなかった。
突然アーラは頭を上げた。
遠方に巨大な二頭の輪郭を捉えた。
「……」
「……パック、この世界はどのくらい広い?」
「えっ?どうしたの急に」
「んー……分からないけど……結構広いと思うよ」
「……何で?」
「……」
(……逃げ切れるか……)
(……逃げて……どうする……)
(それでどうにかなる相手では無い……)
「——まさか!?」
パックが目を見開いた。
「……」
「ココと一緒に発動する、あの魔法は自由に使えんのか?」
「……うん……出来る時と出来ない時があるんだ……」
パックは目を伏せた。
アーラは目を細めた。
(……リスクがあるな……万が一発動しなかった場合、二人に危険が及ぶ……)
精霊たちは口を閉ざした。
理を守る者として、それに従うだけだった。
——上空
ピィィィィ……
黒銀の竜は何度も白金の竜へ呼びかけた。
だが、届かなかった。
ピィィィィ……
それでも諦めなかった。
ピィィィィ……
何度も。
何度も。
ピィィィィ……
(……頼む……戻ってきてくれ……)
(……なぜ我を助けた……)
(……)
黒銀の竜は静かに目を閉じた。
(……いや……我でもそうするな……)
すると、前方を飛行していた白金の竜が近くの村の上空で旋回し始めた。
「!?」
(……どうした……)
黒銀の竜は目を細めた。
(……確かに……あの集落から、嫌な気配がするが……)
次の瞬間。
白金の竜が業火の吐息で集落を焼き払った。
「——っ!?」
「……」
(……お前らしくも無い……)
黒銀の竜は視線を落とし、焼かれた集落を見下ろした。
白金の竜は集落に降り立った。
そして、懸命に何かを探した。
すると、草むらの焼け跡に同胞の骨が落ちていた。
ピィィィィ……
白金の竜は天を仰ぎ大きくひと鳴きした。
そして、骨に向かって癒しの魔法をかけ始めた。
「——っ!?」
(……あれは……同胞の骨か……)
黒銀の竜は白金の竜の背中を見つめ、震えた。
「……」
そして、天を仰いだ。
ゴォォォォォォ……
凄まじい咆哮。
空気を裂き、大地をも揺らした。
黒銀の竜の口角から、炎が漏れた。
「……どこまでも……我々を弄ぶか……」
白金の竜の癒しの魔法も虚しく、骨は崩れ、塵になった。
白金の竜が天を仰いだ。
ピィィィィ……
悲しげな音が、辺りにこだました。
突然、白金の竜が何かに反応し、飛び立った。
同胞を助けるため……王都へと。




