第128話|ココ編【私を全力で甘やかしてくる貴族様、頑張って……】
——デズモンド執務室
デズモンドは机に資料を広げていた。
両肘をつき、組んだ手に顎を乗せていた。
(……証拠は守った……予想通りだったな……)
(……だが、かなりの被害が出たのは想定外だった……)
(……相当な手練)
「……ふぅぅぅぅ……」
デズモンドは深くため息を吐いた。
(……そして、復興利権絡みでウィリアムの線が益々濃くなってきた……)
(——だが)
(その先が途絶える……)
デズモンドの組んだ指に力が入った。
(……直接の繋がりがないのか……)
(壊して儲けるサンデル……直して儲けるウィリアム……)
デズモンドの眉間に皺がよった。
(——橋渡し役がいる)
デズモンドは書類を手に取った。
(ウィリアム邸に出入りしている者を洗うか……)
………………
…………
……
——数日後
デズモンドへ速報が入った。
捜査員が殉職した報せだった。
「——っ!?」
デズモンドは奥歯を噛み締めた。
捜査責任者は続けた。
「ウィリアム邸に出入りしていた者のうち、食材を納品していた商人、生活用品を納品していた商人、この捜査を行なっていた捜査員が、何者かによって殺されました」
「……今は、一旦捜査を中断しています」
捜査責任者は目を伏せた。
「……おそらくですが……捜査の撹乱・妨害が目的かと……」
「……」
デズモンドは瞼を固く閉じ、拳を握り締めた。
「……訓練を受けた捜査員が、こうもあっさりと……」
「……相手は殺し専門か……」
捜査責任者は喉を鳴らした。
「……侯爵の護衛を増やします」
「……今のままで良い」
「——ですが」
デズモンドは手で制した。
「……今のままで良い」
「……その人員は、捜査に回せ」
「亡くなった捜査員の穴も埋めねばならん……」
「……」
「はい」
捜査責任者は書類を閉じた。
「……殉職した捜査員の家族へ、援助の手続きも進めております。お任せ下さい」
「……」
デズモンドは窓の外を見た。
(……トール殿……部下を死なせてしまったよ……)
(……これでは、誰も救えん……)
デズモンドはカーテンを握り締めた。




