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第126話|ココ編【私を全力で甘やかしてくる貴族様が、優しくて、泣いちゃったじゃない】

——デズモンド執務室


デズモンドは机に向かい、報告書に目を通しながら、集めた情報を整理していた。


(……魔族は骨に引き寄せられる……)


(……ココ嬢の言った通りだった……)


(……そして、部下たちが見たという謎の少年……)


(……おそらく、情報提供者はその人物で間違いなさそうだが……)


(……「風を操っているように見えました」……)

デズモンドは口髭をなぞった。


(……風を操る……か)


デズモンドは目を血走らせた。


(——レア勇者!?)


「……」

秘書はデズモンドの一部始終を見ながら、眼鏡を掛け直した。


「……次の休暇はココ様に会いに行かれますか?」


デズモンドの肩が跳ねた。


——ココ邸


デズモンドは手土産の菓子を山ほど持参していた。


ココは胸の前で手を組み、目を輝かせて今日はどれを食べようかと選んでいた。


デズモンドは口髭をなぞり、一つの箱を手に取った。

「……ココ嬢、巷ではこれが話題を呼んでいるらしいぞ?」


「開店から行列が出来るくらいだ」


「——ほんと!?」


「じゃあ、それにするわ!」


デズモンドは跳ねて喜ぶココの手に視線を奪われた。

その手には戦いで受けた傷跡が、以前よりも増えていた。


(……普通の年頃の少女なら……戦場に駆り立てられることも無いだろうに……)


「——デズモンド?……聞いてる?」


ココがデズモンドの顔を覗き込んだ。


「——!?」


「いや、すまん。考え事をしていてな……ハハ……」


「……」


(……こんな少女が戦わなければならない世を、終わらせる事ができるかもしれん……)


ココはいそいそとおすすめの菓子の箱を開け、目を輝かせていた。


デズモンドの口髭が上がった。


別の菓子の包みを持ち上げた。

「こっちの菓子は、日持ちがするらしい……今日開けなくとも、後日誰かと食べられるぞ」


「——えっ」

ココは一瞬止まった。


デズモンドから包みを受け取り、南側の窓から空を見た。

「……」


デズモンドは口髭をなぞった。


すると、ココがデズモンドに向き直った。


「……あのね……実はね……」


「……」

デズモンドは静かに次の言葉を待った。


ココは菓子の包みを静かにテーブルに置いた。

「……多分……現場にいた二人から聞いてると思うけど……」


「あの場にいた人物が、協力者なの……」


目を伏せ、両手を組んで握りしめた。

「……私、彼を守りたいの……」


「……だから……」


デズモンドは、ココの肩にそっと手を添えた。


「分かっている……我々は、あの少年については捜査しない方針だ」


「部下にも、秘密を漏らさぬようキツく言ってある」


「——っ!?」

ココが顔を上げた。


「……少しだけ、聞いても良いか?」


「……」

ココの握った手に力が入った。


デズモンドはそれを見逃さなかった。


「……」


「彼は、教団に追われているのか?」


「……」

ココは何も答えずに、静かに喉を鳴らした。


「……そうか」


次の瞬間、ココの表情が崩れた。

大粒の涙が溢れ、頬を伝った。


首を横に振りながら声を震わせた。

「……彼は悪くないの……村を……人を……助けているの……」


「……誰にも理解されずに……」


「……それなのに……追われて、隠れて……傷ついても……」


「……それでも……」


ココは瞼を強く閉じ、肩を震わせた。

溢れた雫が、床を濡らした。


「——っ」

(——これほどまでの業を……この子たちは……)


デズモンドは天を仰いだ。

雫が静かに頬を伝った。

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