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第125話|ココ編【私を全力で甘やかしてくる貴族様が、じわじわと追い詰めてるんだけど!】

——デズモンド執務室


デズモンドはココの刻印入りのペーパーナイフに、温かな息を吹きかけ、洗濯したばかりのハンカチでくもりを拭った。


そして、ピカピカになったペーパーナイフを扉に向けた。


「……」


当然、魔法は出ない。


だが同時に扉がノックされた。


デズモンドの肩が跳ねた。


デズモンドはペーパーナイフを静かに引き出しにしまった。


「……入れ」


「失礼します」

扉の外から声が聞こえ、捜査責任者が入ってきた。


捜査責任者は、いつもの報告の位置よりも近づいて声を低くした。

「例の捜査ですが、侯爵の狙い通り、ウィリアム伯爵が復興支援の商人選定に便宜を図っていたようです」


「……そうか」

デズモンドは両肘をつき、組んだ手に額を乗せ、ため息混じりで答えた。


「……ですが」


「……その先から教団までが追えません……」

捜査責任者は視線を落とした。


「……そうか」

デズモンドは静かに立ち上がり、窓の外を見た。


雨粒が、窓ガラスを濡らしていた。


「……」

捜査責任者はデズモンドの背中に向かって言った。


「……詳細はこちらの報告書に……」

デズモンドの机の上に、報告書を真っ直ぐに置いた。


するとデズモンドが振り返った。

「証拠品保管庫の人員を増やせ」


「……ハッ」

捜査責任者は敬礼して、静かに退室していった。


続いて扉がノックされた。

秘書のノックの仕方だった。


デズモンドは扉の方へ振り向いた。


「……何だ?」


扉が開き、秘書が目を伏せた。


「記者の、アカリ殿がお見えです」


「——アカリ君か!」


「……通してくれ」


「はい」


………………

…………

……


「侯爵、ご機嫌麗しゅう……」

アカリは少しオーバーに挨拶した。


デズモンドの口髭が上がった。


「ハハ、相変わらずだな、アカリ君」


アカリは少し前屈みになり、デズモンドを覗き込んだ。

「……侯爵様……いい人紹介してくださる話、ちゃんと覚えてます?」


「……ん?……ああ……まぁ……いずれな……」

デズモンドは天井の隅に視線を移した。


「んふふ♪」


「冗談ですよ、侯爵様」


「……」


アカリはぴょんとデズモンドに近づいて、手帳を開き声をひそめた。

「……例の情報ですけど……」


「私の移民仲間で、各地の復興の作業員をしてる人がいるんですけど……」


「聖騎士団が、魔族の骨を回収していたって言うんですよ」


「——そうか」


「……これ、なんかヤバい案件なんですか?」

アカリは手帳を持って弾んでいた。


「……今はまだ言えんが……追い詰めた暁には、一番に情報提供すると約束しよう……」

デズモンドの口髭が上がった。


「——!?」

アカリは手帳を持った左手を腰に当て、右手でペンを回した。


「……約束ですよ♪侯爵様」

そう言ってウインクした。

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