第124話|ココ編【私を全力で甘やかしてくる貴族様の勘が鋭いんだけど!】
——デズモンド執務室
デズモンドは窓の外を見ていた。
(……サンデル側の動きが止まった……勘付かれたか?……)
(……骨だけではサンデルを追い込めん……)
(……だが、引っかかる……なぜ村を襲わせる?……)
(……得をしてる者がいる……か)
「……」
デズモンドは秘書に捜査員を呼ぶように伝えた。
……数分後
デズモンドは指で口髭をなぞった。
「……復興を請け負っている商人がいたはずだ……まずはそいつを調べろ」
「……その後ろにいる奴からサンデルを追う」
「教団の見張りも継続だ」
「はい」
捜査責任者は敬礼し、部屋を出ていった。
デズモンドは机に両肘をついて、組んだ手に顎を乗せた。
「……」
——ウィリアム邸
執事がウィリアム伯爵の部屋の扉をノックした。
「ウィリアム様、孤児院の院長がお越しになっておりますが……」
「——何だと?……」
(……サンデルめ……何の用だ?)
「……通せ」
「かしこまりました」
執事は扉の外から答え、孤児院の院長を呼びに向かった。
「……」
(……もう少しで侯爵位に手が届くのだ……あまり接触したく無いのだが……)
扉がノックされた。
「どうぞお入りください」
ウィリアムはあえて出迎えなかった。
院長が入ってきた。
にこやかな笑顔の中で、目だけが笑っていなかった。
「ご機嫌麗しゅうございます、ウィリアム侯爵」
「……まだ侯爵では無い」
「余計な事は言うな」
「今日は急にどうしたんだ?」
「……例の貴族が嗅ぎ回っているようです……」
がたん、と音を立ててウィリアムが立ち上がった。
ウィリアムは目を見開き、爪を噛んだ。
「……」
「……それを言いに来たのか」
目だけで院長を見た。
「……いいえ」
「……お困りなら、お力をお貸ししようと思いまして……」
「……」
院長は笑顔を崩さない。
「……座っても?」
「勝手にしたまえ」
「では、お言葉に甘えて……」
院長の細い目の隙間の中で、黒い瞳だけが動いた。
「……こちらで何とかしましょうか?……それなりのものはいただきますが……」
「——!?」
「……また金か……」
ウィリアムは血走った目で院長を見た。
院長の笑顔はピクリとも動かなかった。
「……復興に携わる業界は景気が良いそうですね……」
「……」
ウィリアムはまた爪を噛んだ。




