第121話|ココ編【俺がパックを認めた感動はどこに……】
パックは眉間に皺を寄せていた。
それを見ていたアーラが少し心配して尋ねた。
「……何を悩んでいる」
「……うん」
「……」
パックは重い口を開いた。
「……僕って、声を聞く者だと思う?」
「……」
アーラは目を瞬かせた。
「……何だそれは」
ハッとして、ピットを見た。
(……奴の影響か……?)
「……僕的には、境界の声を聞く者、とか、狭間の声を聞く者、とか付けた方が良いと思うんだよね……」
パックは顎に手を添えて、眉間に皺を寄せたまま、遠くを見つめた。
「……」
アーラは肩の上に乗っていたエルザに耳打ちした。
「……あの二人、離した方が良くないか?」
エルザも声を低くした。
「……パックさん楽しそうですし……私は良いと思いますけど……」
パックはピットに相談した。
「ねぇピット、境界の声を聞く者、とか、狭間の声を聞く者とかどうかな?」
「……うん」
「センスあるよ」
「——ほんと!?」
「……うん、でもね……僕なら……“人ならざる声を聞く者”にするかな……」
「——っ!?」
パックは震えた。
アーラは静かにその様子を見ていた。
(——いかん、このままでは……)
「パック、ちょっとこっちに来い」
「んー、アーラはちょっと黙ってて」
「——っ!?」
「……黙ってろ……だと?……」
アーラはぷるぷると肩を震わせた。
エルザはアーラの肩の上で、アーラの背中を優しく撫でた。
ココは頬をぷくっと膨らませて、パックの背中を睨みつけていた。
(……何よ、蛇とばっかり仲良くして……)
(……どれだけ心配して来たと思ってるのよ……)
ピットはふと周囲の温度差に気づいた。
アーラを見ると、少し温度が下がっていた。
アーラの肩の上に乗っているエルザは平熱。
そして、背後から感じる熱源が、尋常じゃない熱を放出していた。
「……」
(……あの子は確か、ココって名前……僕のことが苦手なんだよな……)
(……だとすると、あの熱は……僕に向けられている?……)
(……それともパックか……どっちなんだ……)
ピットは喉を鳴らした。
すると、アーラが口を開いた。
「……そういえば、ピット、だったか?……召喚時のノイズはどう対処したんだ?」
「……」
ピットは聞こえていないようだった。
パックがピットに伝えた。
「……ピット?……アーラが召喚時のノイズはどう対処したのかって聞いてるよ?」
「……え?……ああ、ちょっと待って」
ピットはそう言って、アーラにピタっとくっついた。
「……召喚って何?」
「……何だこれは……俺は何をされている?」
アーラがピットを見た。
「……話があるって言うから……僕はこうしないとよく聞こえないんだ」
「——そうなのか?」
「……うん、嫌だったら離れるけど……」
「……いや、大丈夫だ。俺の方こそ、お前の都合を知らずにすまんな」
パックからピットが離れたので、ココがすかさずパックの側に陣取った。
「……なに?なんの話?……」
パックはココの方を向いた。
「あのね、召喚時のノイズはどう対処したのかって」
「ピットはくっつかないとよく聞こえないんだって」
ココは腕を組んだ。
「それはね……蛇には耳が無いからよ」
「——耳が無い?」
「そうよ、でも、私たちの世界の蛇の話よ」
「ピットもそうだとは限らないわ」
アーラがパックの言葉を聞いて理解した。
「ピットには耳が無いのか……なるほどな……ノイズ自体が影響しなかったのかもしれんな……」
「この行動にも合点がいく」
ピットはアーラとパックを交互に見た。
「召喚とか耳って、何?」
パックはピットを見た。
「確かに、耳が見当たらない」
「耳っていうのはこれだよ」
自分の耳を指差した。
「召喚っていうのは、ピットのいた世界から、僕たちの世界に突然連れてこられることだよ」
「……」
ピットは上を向いた。
「……ああ、あれか」
「あれはビックリしたね」
「……」
「……それだけか?」
アーラは少し驚いた。
「……うん。それ以外にある?」
アーラは鼻を鳴らした。
「……いや、確かにそうだな……俺も驚いたからな」
「だが、俺はそれよりもお前に驚いているがな」
アーラは目を細めた。
「能力は毒か?」
「そうだね、あとは体の模様が変えられるくらいかな」
「どの程度だ?」
「周りの模様に似せる程度だね」
「……なるほど……毒と潜伏か……」
ピットはふと、ココを見た。
先ほどの高熱は収まり、パックよりも少し高い温度に落ち着いていた。
「……」
(……やっぱり、僕に対して熱くなってたのかな……)
ピットは舌を出して、チロチロと振った。




