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第119話|ココ編【もう……認めざるを得んな】

重傷の捜査員二人は“魔族の骨”を回収し、馬車で運ばれていった。


パックは茂みに向かって話しかけた。

「……出てきても良いよ」


僅かな枯葉の擦れる音とともに、蛇型魔族が茂みから顔を出した。


「——!?」


ココは少し跳ねたあと、木の陰に隠れた。


そして木の陰からひょっこりと顔だけ出した。

「……やっぱ無理……」


「……」

パックはココを目で追っていた。


「……蛇、そんなにダメなの?」


ココは何度も頷いた。


パックは蛇型魔族の方を向き、笑顔を引きつらせた。

「……ごめん、怖いみたい」


「……別に……慣れてるから気にしなくて良いよ……」

蛇型魔族はココを見て言った。


「……あ、彼女は君と話せないよ、多分」

パックはこめかみを掻いた。


「……そうなの?」

蛇型魔族はパックの方を向いた。


「君とは話せるのに?」


「うん。なんていうかな……その……僕の持つ“能力”みたいなので君と話せるんだ」


「……ああ、そうなんだ……なるほど」


「……」


「まぁ、僕も話せる相手は限られてるしね」

蛇型魔族は舌を出してチロチロ振った。


「……え、それってどういう……」


「地面からとか、直接触れたりしないと、話せないんだよ」


「——そうなの?」


「……うん、だから君とこんなに意思疎通出来てびっくりしてるよ」


「ここは“そういう所”なのかと思ったら違うみたいだね」


「……君だけの能力……ね」

蛇型魔族は舌を出してチロチロと振った。


「……どうして舌を出して振るの?」


「……してないけど」


「……」

蛇型魔族は舌を出してチロチロと振った。


「……今、振ってたよ?」


「……え」

蛇型魔族の動きが止まった。


「……え」

パックの動きも止まった。


パックはそれ以上、この話題は避けた。


「……君、名前ってあるの?」


「何それ」

蛇型魔族は舌を出してチロチロと振った。


パックは舌を見ないようにした。

「……呼び方?みたいなものだよ」


「……」


「冥界の毒牙」


「——え?」


「だから、“冥界の毒牙”」


「……冥界の……」


「そう、毒牙」


(——何それカッコいい)

パックは前のめりになった。


「それが名前?」


「名前って何のことかよく分からないけど、僕は自分をそう呼んでる」


「……君は」


「……そうだな……“声を聞く者”だね」


「……え」

パックは手を中途半端に上げたまま止まった。

(……僕の名前、パックなんだけどな……)


「……僕も、冥界の〇〇みたいなのが良いな」


「そう?ピッタリだと思うんだけど……」


パックは背後から袖を引かれて振り向いた。


「……ちょっと、何の話をしてるの……」


ココが怪訝そうな顔をしていた。


「——そうだった、ごめん」


ココは蛇型魔族をちらりと見て、背筋をぷるると震わせた。


蛇型魔族はココを見て、舌を出してチロチロ振った。


「……」

ココの顔から血の気が引いた。

そして、パックの袖をギュッと掴んだ。


「……やっぱり、連れて行くのよね?」


パックはココを見た。

「……うん、そのつもりだよ」


「……その前に……」

そして、猪型魔族を見た。


「……そうね」

ココはオーブを取り出した。


二人は猪型魔族の前で手を繋いだ。


ココのオーブが紅く染まった。


猪型魔族の下に、紅く輝く魔法陣が浮かび上がった。


猪型魔族は静かに炎に包まれた。


三人は燃え尽きるまで、猪型魔族を見送った。


「……」


「……行こう」

パックは蛇型魔族を見た。

「ついて来て」


「仲間を紹介するよ」


「仲間がいるの?」

蛇型魔族はするる、と茂みから出てきた。


ココはぴょんぴょんと距離を取った。


「……ハハ……彼女も仲間だから……」

パックの笑顔が引きつった。


「……気にしてないよ」

蛇型魔族は抑揚のない声で言った。


——アーラの救護所


アーラは三人の音を捉えた。


(……壊れていない同胞も一緒か……だが、この輪郭……手足が無い?)


(元々無いのか……)


アーラはエルザの方を向いた。

「小僧たちが戻ってくる」


「……同胞も一緒だ」


「仲間が?」


「……敵では無いな……殺気が無い。だが、音が極端に少ない」


(感情が薄いのか……?)


やがて、パックたちの姿が視認できるほどになった。


蜂たちが先に戻ってきた。


「女王様!ただいま戻りました」


「全員無事です」


「……あ、そういえばパックが怪我しました」


「……そんなついでみたいに言ってはダメです」

エルザは小さくため息をついた。


アーラはパックたちの方を向いた。

(……珍しいな……小娘が怯えている?……)


(あの同胞にか?……それほどの奴には見えんが……)


そして、エルザが三人を出迎えた。

「……みなさんお疲れ様でした……」


エルザはパックの脇腹を見て青ざめた。


「——パックさん!すごい怪我じゃないですか!」


パックは脇腹を見た。

「ああ、うん。もう血は止まってるんだ。大丈夫だよ」


すると、アーラが口を開いた。

「……見直したぞ、パック」


「——!?」


全員がアーラを見た。


一番驚いたのはパックだった。

「……今……パックって……」


アーラは鼻を鳴らした。

「……当然だ、もう小僧とは呼べん」


アーラは目を細めた。

「あの同胞相手に良くやったな」


「……」

パックは、震える両手を握り、固く瞼を閉じた。

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