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第114話|ココ編【——パック!?】

——アーラの救護所


アーラは目を細めた。


(壊れた同胞の反応が弱まっている……それともう一つ……壊れていない同胞……か?)


(……一時はどうなる事かとヒヤヒヤしたが……)


(それにしても……あの小僧が……な)

アーラは鼻を鳴らした。


エルザがアーラを見た。

「……パックさんと……あの子たちは……」


「無事だ」


「……良かった……」

エルザは両手を握りしめた。


「……だが、まだ油断できん……」


「……」

エルザは子どもたちが向かった先を見た。


——森の中


猪型魔族は唾液を撒き散らしながら、牙を振るった。


だが、その威力は目に見えて弱まっていた。


——キィィィン!


もう一本の牙の先端が宙を舞った。


「——おい!人間。牙を削るだけじゃ勝てないぞ!」

蜂たちが叫んだ。


「分かってる……でも……」

パックは奥歯を噛み締めた。


ブフーッ、ブフーッ……


猪型魔族は虚ろな目で、ふらりと傾き、踏みとどまった。


頭を振った。


「……助ける……」


「——っ!?」

パックの肺がひくっと跳ねた。


目尻が滲んだ。

「——くっ」


うずくまる捜査員を見た。

「……僕が……止めないと……」


パックはナイフを握り直した。


「……敵……」


「……止めないと……」


「……」


猪型魔族の目が上を向いた。


ズズン……

猪型魔族はそのまま倒れ込んだ。


「……」

パックの両手がだらりと落ちた。


パックはふらりと、倒れた猪型魔族に近づいた。


ブフーッ、ブフーッ……


そして、猪型魔族の背中に触れた。


「……僕にはできない……」


「……助けたい……」


「——そうだ!薬草……」


パックは近くの茂みを探し始めた。


「——おい、人間!何してる!チャンスだ!やれ!」

蜂たちはパックの周りを飛んだ。


パックは石で薬草を潰し始めた。


「……人間……」

蜂たちはそれ以上なにも言えなくなった。


「……僕、やっぱり余計な事をしたかな……」

茂みの中の影も呟いた。


パックは涙を拭った。

そして、すり潰した薬草を、猪型魔族の紫色に腫れた足に塗った。


ブヒィィィ……

猪型魔族は一度大きく跳ねたが、暴れる体力も残っていないようだった。


「……くっ」


「……この毒に……効くのか……」


その時、馬のいななきが聞こえた。


「……何……してるの……」

ココは馬から降りた。


パックに駆け寄った。


「……」

ココは言葉を失った。


パックは俯いた。

「……僕には……殺せなかった……」


「……声が……」

パックはそれ以上答えられなかった。


ココはパックの肩に手を伸ばし、ハッとした。

そして、辺りを見回した。

「——!?」

木の影にうずくまる捜査員が見えた。


「……」

ココの背中に冷たいものが走った。


「——パッ……」

慌てて言葉を切った。


パックの側でしゃがみ、声をひそめた。

「……どういう事……」


「……仕方なかったんだ……」

パックは俯いたまま答えた。


「……どこまで見られたの……」


「——必死だったから……覚えてない……」


ココは蜂たちを見て、猪型魔族に視線を戻した。

「……そう……」


「……あなた一人でここまで?」


パックは首を横に振った。

「……みんなが助けてくれたんだ」


ココはパックの脇腹の傷が目に入った。


顔から血の気が引いた。

「——やられたの?見せて」


「——っ」

脇腹からはまだ血が止まっていなかった。


「……大丈夫。傷は浅いよ……」

パックの笑いが引きつった。


「……あ……」

ココの手が震えた。


そして、パックを抱きしめた。

「……遅くなって、ごめんなさい……」


パックはココの背中を優しく叩いた。

「……謝らないで……無事だから」


「……」

ココはゆっくりと立ち上がり、猪型魔族を見た。

「……これは……毒?」


「……誰がやったの?」


ココは蜂たちを見た。


「……違うんだ……後で説明する」


「……分かったわ」

ココは捜査員の方へ歩き出した。


「——大丈夫?」

ココは捜査員の顔を覗き込んだ。


捜査員は朦朧とした意識の中、目を開けた。

「——っ!?ココ様!……痛っ……」


「……あなたたちは?」


「……はぁ、はぁ……くっ……私たちは……捜査で近くの村に……ゴホッ……痛っ……」


「——捜査!?……じゃあ、デズモンドの?」


「……そうです……」


ココは肩の力が抜けた。

「……そう……あなた一人?」


「……いえ、もう一人は……別の場所で……」


「私が確認するわ。あなたはここで休んでて」


「……はい」


ココはパックの元へ戻った。

「……もう一人は無事なの?」


「うん。あっちに運んだから大丈夫だと思う」

パックは指差した。


ココはパックが指差した方を見た。

遠目だが、倒れた人物が動いたのを確認した。


ココは猪型魔族の腫れた足を見た。

「……壊れているのよね?」


「……うん」


「……とどめは私が——」

パックが遮った。

「——待って……話しかけてみる」


「……声が聞こえたんだ」


「——何ですって?」

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