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第108話|ココ編【私を全力で甘やかしてくる貴族様が、いつもと雰囲気違うんだけど!】

——復興中の村


デズモンドの部下は村人に話しかけた。

「こんにちは」


「はいよ、こんにちは……」


「……」


「あんた……見ない顔だね……」

村人は半歩下がった。


「……失礼しました、私、こういう者です……」

デズモンドの部下は捜査員の刻印入りブローチを見せた。


「……なんだよ……こっちは魔族に襲われて忙しいんだ……火事場泥棒でも捕まえにきたのか?……」


「……」


捜査員は笑顔を崩さず続けた。

「……魔族襲撃の前後に、普段と違った事がありませんでしたか?」


「……」


「……さあな、覚えてないな……」


「あんた達はよ、人間ばかり捕まえてないで、魔族を捕まえてくれよ……ったく……」


「……ありがとうございました」

捜査員は笑顔のまま、一礼した。


「……」


「……これは、骨が折れそうですね……」

もう一人の捜査員はため息をついた。


「……ま、仕方ないな……」

捜査員は肩をすくめた。


捜査員は少し声を低くした。

「……上からの情報だと、子どもの証言から有力なものが出たって話だ……」


「……そうだったな」


「……子どもたちから当たってみるか……」


「……」


捜査員が歩いていると、広場で子どもたちが遊んでいるのが見えた。


「……やあ、こんにちは」


「こんにちはー」

子どもたちが一斉に振り向いた。


「……」


「……おじさんたち……だれ?」


子どもたちも半歩下がった。


「……」


「ごめんねー、おじさんたちはね……これなんだけど、知ってるかな?」

捜査員はブローチを見せた。


「……あっ、知ってる」

一人の子どもが指差した。


「捜査員のバッヂだ」


「正解だ、よく知ってるね」


「……悪い奴を捕まえにきたの?」


「……えっ、この村にいるの……」

子どもたちがざわついた。


捜査員は手を振った。

「違う違う、この村に悪い人がいるって話じゃなくてね……」


「魔族襲撃の前後に、普段と変わったことがなかったかなってね……」


「何か気がついたことがあったら、教えてくれないかな……」

捜査員は困った顔をして見せた。


「……」

子どもたちは顔を見合わせた。


「……何かあったっけ?」


「んー、分かんない」


「ケインさんちのニワトリが逃げたよね?」


「あっ、逃げた逃げた!捕まえるの大変だったよね」


「僕が捕まえたら、手にうんちされたんだよね」


「されたされた!きったねー」


「縁切ったー」


「……」

捜査員は笑顔を引き攣らせた。


後ろにいた捜査員からため息が漏れた。

「……他に、変わったことはなかったかな?……」


「んー、分かんない」


「なんかあったっけ?」

子どもたちは互いに顔を見合わせた。


「……聖騎士団とか……教団の人たちが来なかったかい?……」


「……あー来たよ!ね?」


「うん、来た来た」


捜査員はしゃがんで子どもたちと目線を合わせた。

「……どんな事してたか、覚えてるかな?」


「……えっ……うーんとね……」


「……壊れた家とか片付けてたかな……」


「……そうだね……片付けしてたね……」


「……他には?」


「えっ?……んー……怪我した人運んだりとか……」


「……んー……」


「……」

子どもたちからは、もう何も出てこなかった。


捜査員は一通り聞き込みを終えると、次の復興中の村へと向かった。


だが——


次の村も。


その次の村も。


何一つ、有力な情報は得られなかった。


——数日後


別で動いていた捜査員から、子どもたちの証言で気になる情報を得たとの連絡が入った。


聖騎士団が、魔族の骨を回収していたとの目撃情報だった。


——デズモンド邸


「——ふむ」

デズモンドは報告書を机の上に置いた。


「……次は、襲撃前の“骨”の情報が欲しいな……」


「……出来れば、教団が仕掛けたという証拠が欲しい……」


デズモンドは机に両肘をついて、組んだ手の甲に顎を乗せた。


その時、扉がノックされた。


「……入れ」


「——失礼します」

魔族の骨を調査する捜査員は静かに扉を閉めた。


デズモンドに耳打ちする。

「……魔族襲撃を受けた村の住民から、襲撃の前夜に、教団らしき兵士数名が村の近くを馬で駆けるのを目撃した情報が二件入りました」


「二件は別々の村です」


「報告書は作成中ですが、先にお耳にと思いまして……」


「——そうか」


デズモンドの眉間に皺が寄った。

「……よし、人手が必要だな……」


「なんとかしよう」


「——では、襲撃を受けていない村に、責任者を含めた捜査員を配置しろ」


「昼夜問わず、交代で見張れ」


「はっ」

捜査員が敬礼した。


デズモンドの目が細まる。

「……長期戦になるがな……」

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