第107話|ココ編【私を全力で甘やかしてくる貴族様が、すっごい頼りになるんだけど!】
ココは一度目を伏せ、デズモンドを見た。
「……あのね……魔族が村を襲う理由なんだけど……」
「……少しつかめたの……」
「——っ!?」
滅多に動揺を見せないデズモンドだったが、ココの話に驚きを隠せなかった。
「……」
ココはデズモンドの反応を見ながらも、そのまま話を続けた。
「……魔族は人間を食べるために村を襲うのではなくて……“魔族の骨”に引き寄せられて……その結果、村を襲っているみたいなの……」
「……」
「……なるほど……」
デズモンドは“取り調べ”にならないよう、心を落ち着かせた。
「……その調査を手伝えばよいのだな?」
「……デズモンドにしか頼めないの……」
デズモンドはココの言葉を受けて、大きく深呼吸をした。
そして、口髭を指でなぞった。
「……私に任せたまえ」
「……」
「……一つだけ確認させてほしい」
「……答えられなければ、答えなくていい……」
「……教団が、関係しているのか?」
「……」
ココは黙った。
「……ふむ」
「これは独り言だが……私は教団を独自に調べていてね……行き詰まっていたところだ……」
「……信頼のおける者が、秘密裏に動いている……」
「……それと、情報提供者の素性が漏れることはない……だから安心しなさい」
デズモンドはココを見た。
「……」
ココは黙っていたが、心のつかえがとれたように見えた。
「……さて」
「……紅茶のおかわりはどうだ?」
デズモンドの口髭が優しく上がった。
——その日の夜。
デズモンドは教団を極秘に捜査している責任者を急いで呼んだ。
「——と、いうわけだ……魔族に襲われた村の人たちから話を聞いてくれ」
「はっ」
捜査責任者は一礼し、急いで退室した。
デズモンドはため息をついて、窓の外を見た。
「……サンデルめ……今度こそ、尻尾を掴んでやるぞ……」
——教団本部
銀の聖杯をくるりと回し、果実酒の香りを楽しんだあと、一口含んだ。
「……次の“召喚の儀”ですが……勇者の小娘には、さらなる試練が必要ですね……」
「……今度の勇者は、片目でも失ってくれると……もっと人気が出そうなんですけどね……」
「……」
側近は息を詰まらせた。
サンデルは指輪に光を反射させた。
「……召喚の儀を急がせなさい」
「……はい」
側近は乾いた喉から、声を絞り出した。
サンデルはチーズを一口かじり、果実酒を楽しんだ。
「……今日は例の奴隷を一人、私の部屋に連れてきなさい……」
側近は目を伏せた。
「……かしこまりました」




