第100話|ココ編【……また、飛べるよね?】
———森の中
アーラが倒れていた場所は、村からかなり離れた深い森の中だった。
それが幸いして、人が立ち入る場所ではなかった。
アーラは横たわったまま、荒い呼吸を繰り返していた。
翼に開いた穴から、ゆっくりと血が滲んでいる。
ココは布を押さえたまま、唇を噛んだ。
パックが翼の穴を見た。
「……アーラ、これ……治るの?……」
手が震えていた。
アーラが鼻を鳴らした。
「……心配するな……時間はかかるが、いずれ塞がる……」
「——本当?」
パックの肩がすとんと落ちた。
「……良かったぁぁぁ……」
アーラは穴の開いた翼を見た。
「……それよりすまんな……これではすっかり、足手まといだ……」
パックがアーラに向き直った。
「そんな事ない!」
「……アーラがいなかったら……どうなっていたかわからないよ……」
エルザが胸ポケットから顔を出した。
「……あの……パックさん、持っている私たちの蜜を、アーラさんに飲ませてください」
「傷は癒せませんが、体力が回復すると思います」
「——蜜!」
アーラが首を上げる。
「早く、くれ」
パックが吹き出す。
「……その様子だと、大丈夫そうだね……」
献身的に傷を押さえていたココが、パックたちをじっと見る。
「……なんだか、私だけ仲間はずれみたい……」
パックはココを見た。
「……そっか、ごめん。ココはアーラたちの声が聞こえないんだよね」
ココが笑った。
「……ううん、冗談よ……それよりも、どのくらいで傷が塞がるの?」
アーラが首を伸ばした。
「……小僧、スプーンが、遠い……」
パックはアーラに向き直り、笑った。
「……あ……ごめん、ごめん」
「アーラ、傷はどのくらいで塞がるの?」
アーラは翼の傷を見た。
「……七日……はかかるな……」
「飛べるようになるの?」
「……あぁ……だが、戦闘は無理だ」
「……元どおり飛べるようになるには、もっと先だ」
「……すまんな」
アーラは目を伏せた。
パックがココを見る。
「……傷が塞がるのに七日だって……元どおり飛べるようになるのはもっと先になるって……」
ココは鞄を漁った。
「応急薬はできるだけ置いていくわ……アーラに効くか分からないけど……」
「必要な物は後から持ってくるから、待っててちょうだい」
パックはアーラの傷を見た。
「……うん、ありがとう」
ココは村の方角を見た。
遠くの空にはまだ、黒煙が上がっていた。




