09話 中身は何?
掘る!掘るっ!爪ドリル!!
ザクザクと音を立てて快調に突き進む。
骨強化してからというもの、明らかに掘削速度が上がっていた。以前なら岩肌に弾かれていた感触も、今は乾いた土を崩している程度だ。ザクザク。
けど「あんまり突き進んで山を横断しました!」は、さすがに笑えない。地下を目指して角度を調整。迷惑は掛けないに越したことはない。ザクザク。
魔素感知と吸収も忘れない。
特に濃度高いものは危険だ。今の骨強化でどこまで負荷がかかるかわからない。
ザク…………さて、ずいぶん進んだな。
(魔素感知)
対象物:石
濃度:31%
純度:低
色:緑
お。
今まで見た中じゃ、だいぶ高い。
高いと何なのか知らないが、商人は濃度より純度。中身は分からなくても、見た目は嘘をつかない。
今度カヤマさんに濃度のこと聞いてみよう。よし、いっちょやってみますか!
(魔素圧縮!)
瞬間、石の内側で細い光の筋が中心に吸い込まれる。
直後に奥底から小さな脈動。心臓が鼓動するように一度、二度、三度……。
……え、おわり?地味。圧縮できた?見た目変わってないけど……。調べよう。
(魔素感知)
対象物:石
濃度:31%
純度:高
色:緑
圧縮率:89%
……。
…………。
まてまてまて。
思わず石を持ち上げる。濃度に変化はない。純度だけが異様に上がっている。
純度が上がれば見た目に変化あるはずなんだけどなぁ。なんだこれ。天然物だからか?
……腑に落ちない。これを報酬にする?いいのか?よくない。
何が変わったのか調べようと石をくるくる回しているうちに、石の亀裂に骨が重なり合う。
あ、やっちまった!
パキッと音を立てて石が真っ二つに割れた。
すると中から、薄くエメラルド色に発光する魔鉱石の結晶が姿を見せる。
え、えーーーー!!中にあったの?……いや、考えればそうか、圧縮だからな。内側で魔素濃度が凝縮されたものが出来上がっていたのか。
……きれいだ。
こんな原石を間近で見ることがなかったため、思わず見惚れてしまう。そりゃ売れるわな。
これをカヤマさんに持っていけば、万事上手くいく……かな?世界を見てきた人間の審美眼に適うのか?
数打ちゃ当たる!意味は違うけど。
とりあえず多めに見繕うか。
ふと、思い出すように。
圧縮率ってなんだ?
今の状態でかなり綺麗にまとまっているけど、魔素漏れを起こしてるとか?
もし圧縮されたこの魔鉱石にさらなる圧縮をかけたらどうなるんだ?
………………試してみる価値はありそうだな。
対象物:石
濃度:31%
純度:高
色:緑
圧縮率:89%
(魔素圧縮!)
ピキッと音を立てて石が割れる。
中に凝縮されていた魔素は霧散し、音もなく大気中に同化していく。
……うわぁ、やっちまった。
これはあれか、石という器に今回の圧縮が耐え切れなかったのか。一応聞くか。
(魔素圧縮は器によって限界があるの?)
《魔素の保持限界は器の質に依存するため、高密度魔素に耐えきれない器が低密度領域に拡散します》
……ん?
(器の方が先に限界を迎えたってこと?)
《肯定》
(じゃあ、魔素そのものが消えたわけじゃないのか)
《閉鎖環境下において、魔素は消滅、生成もせず、形・密度・状態を変えて移動します》
(……量は変わらず、位置が変わるってこと?)
《肯定》
(ってことは器に元々あった魔素が集まったってことか?)
《肯定。圧縮による魔素結合様式が変化した結果です》
…………むっずかし。
まぁ、圧縮には限界があるよってことだな。うん、理解。あ、そうだ。
(霧散した大気中の魔素も器を用意すれば結晶化できるってこと?)
《質問内容に誤りがあります》
《前提条件不足》
……………は????
どーーーゆーーーことーーー。……まぁ、今日のところは良しとしよう。いっぱい答えてくれたし!
脳内ではすでに限界が起きていたため、モルは考えるのをやめた。
色々と気になることがいっぱいだが、まずは仕事を成功させよう。
考えてみればとんでもないことになっている気もするが、いつも通りできることをできる範囲で行う。
カヤマさんへの報酬を確保するため、気づけば夜明けまで無心で石を割っていた。
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翌日。
ルビィはミントと行動することになった。
「リアンナの母体の交渉にルビィちゃんの交渉術は欠かせませんの!」
高らかにほほ笑む姿に押され、ルビィを引き渡す。
「重要任務っすね……。燃えるっす!」
頼むから二人の熱量で交渉相手を燃焼させないでほしい。……火傷で済めばいいんだが。
カヤマさんのところへやってきた。
大きな袋いっぱいに詰め込んだんだが、これで足りるのか?
そもそも元はただの石……だよな?天然物ではあるがあの伝説のカヤマ・キチノスケにこれが魔鉱石です!って言っても大丈夫な代物か?
うーーーーん、考えてもわからんし当てがなさすぎる。やるだけやろう。
「…………これは」
まじまじと魔鉱石を見つめるカヤマ。
一つの魔鉱石を見る……もう一つを手に取り細部まで針の糸でも通すかのように神経を凝らして視る。
…………なっがい。見すぎだ。良いの?悪いの?どっち!?
「モル……お前さん、これをどこで手に入れた?」
「どこって」
「人間が数百年単位の規模でしか行うことができない天然物の魔鉱石の結晶を、どこで手に入れたと聞いている」
!!???
開いた口が塞がらない。数百年の圧縮が行われた魔素結晶……?これが?
「…………」
「何か隠している奴だとは思っていた」
「……気のいい連中だから気に留めなかった。が、こんな代物を出してくるなら話は別だ」
最初に意識したような威圧感が迫りくる。
鋭い眼光で、俺の心を覗くように静かに問いかけられた。
「お前さんは何者だ?」
【和冬のどうでもいい骨知識】
骨にドリル機能はありません。
モルは勢いで掘っています。
中身は子供です。
良い子は真似しないでください。




