07話 敵と書いて心友と読む。その心は
圧縮。
魔素濃度を圧縮するってこと?ふつーに考えたら小さく纏めるとか一点に集めるとかだよな。
魔素を圧縮したら濃度が高まるってこと?それって……魔鉱石そのものの価値が爆上げするんじゃね?
高純度魔鉱石なんて一部の大商会しか扱えない。それをもし、人為的に作れるなら――
っていうか俺の残り魔素保有時間かなり削っちまった!あといくらだ!?
(現在の魔素保有時間を教えて)
《肉体保持時間329日6時間》
うゎあ、かなり減ってる。一年切っちゃったよ。金貨も手に入ったし、自分用に魔鉱石を購入することも検討しておこう…。
夜明けが差し迫ったため、圧縮のテストは次回に持ち越す。
深夜に出歩いて朝帰りなんて街で変に噂を立てられたらたまらない。
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「で、誰と組んだんだ?」
「いけばわかるっす!向こうも快く承諾してくれたっす!」
不安だが、今日の俺は強気でいける。なんたってちょっとした小金持ちだからな!
どんな交渉でも利を出すぞ!
勇み足も束の間、中層の見慣れた路地、うちと反対側に位置する商店。
……ここってまさか。
「こんちゃーっす!」
「お待ちしてましたわよモルちゃんとルビィちゃん!」
お前か―――———
「ミントの姐さんっ!この間ぶりっす!今日はおねしゃすっ!」
「ルビィちゃん、よろしくてよ。私、この日を楽しみにしてましたの」
俺は、まだこの展開についていけてないぞ?
「幾度となくこのミンティア商会と競合を続け、時には勝ち、時には悔し涙も流しました」
急に子芝居を始めるな。
「しかしっ!ルビィちゃんから話を聞きつけ、私、決心致しましたの!」
なにを。
「ミンティア商会会長のこのミント・ミンティアとモルセラ商会会長モルガ・セラントで共同共営を行いましょうと!」
なにーーー!
「おい、聞いてないぞ!」
「言ってないっすから」
「ここまで切磋琢磨してきた私たちはもはや敵と書いて心友と読む!運命共同体に他なりませんのよ!」
おいおいおい、どんな泥船だ。こいつと一緒に心中なんてごめんだぞ。
ミントは中層で商会を経営しているが、上層のお嬢様のお遊びだと言われがちである。
……たまにヒット出すから腹立つが。
実力のほどはさておき、ミントと組みたがるやつはいない。
御覧の通りの性格もあるが、みんなミントの先入観と勢いについていけないんだ。
俺には理解できないが一部にファンがいるからこそ、こうして商会が成り立っている訳なんだが。
「リアンナ、ですわね」
「!」
なんで……いや、俺も先入観はよそう。ミントもまじめに商売してるんだ。
今回聞いてない話はあとでルビィによく言い聞かせるとして、商人として、今は詳細と売り込む目途を話し合おう。
「そうだ、ここから季節が変わっていく。夏場のリアンナはどこも品薄だからな」
「……モルちゃん、私を馬鹿にしているのかしら?」
マズい、さすがにこんな基礎知識伝えるまでもないか。すまん、見くびった!
「今はリアンナを世界的に普及させる話ですわよっ!」
―———おっと、何の話だ?
「さすが姐さんっ!リアンナで世界平和ってことっすね!」
お前は乗っかるな。
「わかってるわねルビィちゃん。そう、この世界環境の問題となっている魔素濃度をリアンナで解決するわよ」
「そのために今回は家庭内リアンナではなく、都市浄化リアンナを国に売り出しますっ!」
俺は、言葉を失った。
まずは呼吸をしろ、俺。すーはーすーはー、良し。
……いや、何言ってんの?
「ミント、よく聞け。俺達にはそんな大規模な商売できない。中層でやっと形整えてる俺らが国家なんてものに物申せるわけないだろ」
「いいえ、間違っているのはあなたではなくて?モルガ・セラント」
「なに?」
「よくて?需要があるところに供給は生まれ、その欲望と衝動に人々は大きな経済活動を起こすのですわ。下層の現実をご覧になったことは?リアンナも買えずに生活もままならない」
「それは……そうだが、理想と現実を乖離させるな。俺たちの今の力でそんなブツを用意できるわけがないだろう。できないことをできるって言うのは詐欺師のやり方だ。商人じゃない」
「だから、私はできると言ってますの」
あのなぁ……。
「大錬金術師、カヤマ・キチノスケ。彼に依頼をしますのよ」
な。
「無理だ!伝説、というかおとぎ話だぞ?雲をつかむような話じゃないか」
「あなた、最近ジファナ山脈に行ってらして?」
ギクッ。
「……どうしてそれを」
「うちの従者たちが報告して下さいましたわ」
気を付けていたのに……。
「彼に会っていたのでしょう?」
「……は?」
「彼は今、ジファナ山脈の麓に拠点を構えていますのよ。理由はわかりませんが、おそらく彼の興味を引き付ける何かがこの近辺にあったのでしょう」
「あなた、彼を口説きに山脈に出入りしていたのではなくて?」
え、知らない。
けど、否定してごまかせる材料はない。
唐突な質問に戸惑う俺。
ミントが余計なことを勘づく前に……。
———なんとか、するしかない!
「……この情報は後の楽しみに取っておきたかったんだが、さすが俺のライバル!いや、協力関係にある以上心友……ってところか!」
「言われなくても魂はすでに繋がっていましてよ。これまでの戦歴であなたの先読みの良さと観察眼には敬意を表しています。今回の一件もすでに予見していたことなのでしょう?」
「そうなると話は早い。俺が説得してくるから、ミントは魔鉱石と母体の確保を優先してくれ」
「合点ですわ。商運をお祈り申し上げます」
恥ずかしい。なんでこんなこと……けど、乗り切った!
ミントに何か言われる前に、急ぎ早に店を後にする。
ルビィがいつになく嬉しそうにミントへ向かって、手を振って歩いている。
これからジファナ山脈に向かって交渉していくのが楽しみらしい。
ど、どうしよ―――――!
【和冬のどうでもいい商人知識】
商人には規模感が大事です。
「何を売るか」ではなく「誰に売るか」です。
モルは「街で売ろう」を考えます。
ミントは「世界で売ろう」を考えます。
さて、ルビィは何を考えているでしょう?




