12、王族の影
塔の最上階。
風が吹き抜け、空気は薄く、遠くにはアーカディア王国の浮島の輪郭がうっすら見える。
「ここが……あの国……」
エリシアは声を震わせる。
初めて、胸の奥に複雑な感情が渦巻く。
誇りと恐怖、期待と不安。
それらすべてが入り混じり、彼女の心は熱く痛む。
セラが静かに言った。
「あなたが王族の血を持つということは、ただの偶然じゃない。
アーカディアの未来は、あなたに託されているのよ。」
リアンは手を差し伸べ、穏やかに微笑む。
「恐れないで。仲間がいます。心を共にすれば、運命は決して孤独じゃない。」
カイルは元気よく言った。
「よし! 俺たちがついてる限り、絶対に負けないって!」
エリシアは手を握りしめる。
胸の奥で、幼い頃の孤独と抑えられた感情が重なる。
――けれど今、仲間がいる。
恐れも、痛みも、迷いも、すべて力に変えられる。
その時、塔の奥で光が瞬いた。
古代の魔法陣が淡く光を放ち、彼女の紋章と共鳴する。
「……これは……?」
セラが目を見開く。
「王家の印……覚醒しつつある。
あなたがアーカディア王族としての力を、完全に受け入れる時が近いのね。」
エリシアは深く息を吸い、声を強くした。
「……わたしは、アーカディアの王族。
だから、逃げない。
過去も、痛みも、すべて背負って、未来に立つ。」
塔の上に光が降り注ぐ。
紋章は輝きを増し、彼女の魔法はより強く、より鮮やかに、心の色を伴って発動する。
カイルは笑顔で握り拳を振る。
「その意気だ、エリシア! さあ、次はもっと大きな試練だ!」
リアンは静かに祈り、セラは魔導書を開いたまま頷く。
少女は知った――
自分の力と感情は、孤独ではなく、仲間と共にあることで初めて輝くことを。
そして、その輝きこそが、伝説となる道の始まりなのだと。
塔の上で風に髪を揺らし、少女は新たな決意を胸に抱いた。
――これが、王族としての運命の第一歩。
そして、伝説の物語はさらに壮大な章へと続いていく。




