枯枝城奇譚~死人操り~前編
吾は武と名誉を重んじるドラゴンボーンの戦士、へカチン。
高貴にして神秘なるエラドリンのレンジャーと神の御業を顕す敬虔なるエルフの僧侶グエドベ、怜悧なるヒューマンのウィザードであるペンテルらと共に旅をしている。
あてどない旅である。
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前回はうっかりヒューマンのウィザードの名前を失念していた吾ではあるが、ようやくその名、ペンテルを思い出すに至った。ペンテルという名を聞き、それってもしかして目の前の文房具を見て決めたんじゃないの? などとあらぬ疑いを持つ者もいるかもしれぬ。だが、そんなことはない。由緒ある名なのである。どのような由緒かはうっかり失念した。
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さて、鉄道お忘れ物掘り出し市に赴いた吾ら。
そこで吾らが目にしたものは忘れ物として10円で販売されている各種サイコロの数々であった。
怜悧なるペンテルや吾はここぞとばかりに20面体、10面体、8面体に6面体ダイスを購入する。だが、そこにトラップが仕掛けられていようとは。
よくよく見ると、10面体ダイスの一つはルーン文字だかハングル文字だかよくわからない図形が描かれており、どう使用したものか見当もつかない代物であったのだ。10円損した。
なお、さすがに電車内に忘れる者は皆無なのか、4面体ダイスは見当たらなかった。それとも、もしや既に買い占められた後だったのか。
鉄道お忘れ物掘り出し市の謎は深まるばかりである。
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そんなことはさておき、前回の冒険で強敵ミノタウロスより「力を欲するならば、枯れ枝城へ行くがよい」との言葉を受けた吾ら。
早速、枯れ枝城とはそも何か? いかなる城なりや? と、その実体を探るべく動き始める。
英雄クロムの店にて、グエドベが酔客達から噂を聞きだしたところによると、その城こそ盗人ウィザードの逃げ込んだ城とのことであった。例の、この街の領主の館から役にも立たぬガラクタを奪ったというウィザードのことである。
詳しい話を聞くに、彼奴が盗みしは魔法のおたま。もっともそのおたま、魔力は感じられるものの使用法が分からず価値なきものとされていたらしい。
怜悧なるペンテルがそのような魔法的存在に心当たりはないかと思案する。
と、ふと目についたものがある。
それは酒場の隅にて賭け事に興じる男達の姿であった。ティーフリングの商人がヒューマンの盗賊二人組によいようにやられている。よくある光景と言えばそうであるが、怜悧なるペンテルには何やら察せられるものがあったのだ。
「あの二人、イカサマ……?」
その言葉を聞くや否や、高貴なるエラドリンは後背より彼等に歩み寄り、
「イカサマは止せ!」
とばかりに掴みかかる。正義を愛する彼にとって、不正は決して見過ごせぬ。何の前置きもなく見過ごせぬのだ。
「な、なんだ? いきなりいちゃもんつけやがって……?」
盗賊二人組は当然のごとく顔を強張らせる。
「私のやることに間違いはない」
ロングソードつきつけて堂々としたものだ。このように何の躊躇いもなく言い切れる様。吾はそこに、全き善の姿を見た。高貴なるエラドリンこそが正義の正しい在り方であろう。
ともあれ、怜悧なるペンテルの看破したところによると、盗賊どもは手品のような魔法でもってサイコロの目を操り、商人をカモにしていたのだという。
手口がさらされ、盗賊二人組は進退きわまった。それでも言い張るには、
「な、なんだよ!? だまされる方が悪いんだろう!?」
「我々がだましてる時はだまされる方が悪い。そうじゃない時はだましてる方が悪い」
敬虔なる僧侶グエドベが真理を語り、盗賊二人組はほうほうの態で逃げ出すのだった。
ティーフリングの商人は吾等の行いに深く感謝した。
「なんだかよくわかりませんが、お助けいただいたようでありがとうございます」
「自分、正義の人ですから!」
「いや、いいから」
高貴なるエラドリンの慎み深い言葉に、グエドベがそう添える。
「……ところで、そちら様はウィザードでいらっしゃる?」
商人は角の生えた頭を揺らし、怜悧なるペンテルを見るのだ。
「実は私、ウィザード用のワンドも商っておりまして……金貨700枚はする代物ですが、いかがです?」
「全然足りないなあ」
「よござんす。助けていただいたお礼にこうしましょう。あなたの手持ちのお金と、私のワンドを賭けて一勝負と参りませんか?」
スリル。そう名乗ったティーフリングの商人は懲りた様子もなく賭け事を勧めてくるのだった。カードでの一発勝負である。
怜悧なるペンテルの所持金は金貨100枚にも満たぬがそれでもその全てを賭けて挑む。カードが配られた。
「勝負!」
商人スリルのカードは絵札と絵札で20。対するペンテルは、
「ブラックジャックだ!」
エースに絵札であった。最高の勝利である。決してイカサマをしたわけではない。この勝負のためにわざわざ買ってきたカードがよく切れてなかったんで、絵札絵札絵札エースと順番に配られちゃった結果でもない。怜悧なるペンテルの勝負運の強さというものであろう。
こうして、怜悧なるペンテルは魔法のワンド「マスターズ・ワンド・オブ・マジックミサイル」+1を手に入れたのだった。これはマジックミサイルのヒットした相手を一マス押しやるという効果を持つ。
「……それにしても、あなたは私をペテンにかけようとはしませんでしたな?」
商人スリルは感じ入ったようである。
「誠実なお方だ。あなたなら信頼できる」
「いや、負けたときは殺すつもりだったし。イカサマする必要がなかっただけ」
怜悧なるペンテルは冴えたことを言うのだった。
内心はどうあれ、行いとして、イカサマをしなかったことは事実である。
人は行いを持って判断されるものであるし、いかに心の内にドロドロのグチョグチョを抱えていようとも、行いが正しければそれは善であろう。
吾等はまったくもって善なる一党であるのだ。
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時間がないので、続きはまた後日。




