畢竟予兆2
「やあ、チェダー」
「……ドーモ」
化石や古書が眠る博物館。そこにいたのはパルメザン、ただ一人だった。……集合時刻よりいくらか早く着いたようだ、お互い。
彼女は、どこから持ってきたのだろう、黒い正方形テーブルの前の椅子に座っていた。テーブルの上には、ケーキや菓子の山。パルメザンはモンブランを頬張っている。
「……どうしたの、ソレ」
「ん? ああ、ちょっとね。食べる?」
「いやいい」
最後の一口を幸福そうに飲みこみ、パルメザンは演説の如く主張し始めた。
「甘味! それは至高、それは至福! わかるかいチェダー。ボクはね、人間に生まれて本当に良かったと思うよ。
……知ってるかい、キミはボクより年が若そうだから知らないかもしれないけど、脳ってのは、そのエネルギーに糖分しか使えないのさ! 頭はいつもフル回転させなきゃ! そのための甘味! 病気? ナニソレ? 国家管理局があるから病気なんてネェって! 最強! HAHA!」
ざく、と手に持っていたフォークをショートケーキに突き刺す。
ニコニコと笑い、両足を交互に振る少女には微笑ましさと共に、一筋の狂気もあった。……それが、この少女がギアーズに存在している所以のように感じた。
「……アンタみたいな奴が、戦うのにぴったりなのかもね」
「AHAHA、そう思う? じゃあキミは?
――キミは、どうして、ここにいる?」
くりりとした瞳が、チェダーの細い目を穴が開きそうなほどに見つめた。
――――……そんなもの、国に呼ばれたからに決まってる。……だけど、
パルメザンが望んでいる回答は、違う。違うのだ。
冷や汗の一筋が頬をつたう。冷えたこの空間にもかかわらず、チェダーの鼓動は忙しくなる。
「あたしがここにいるのは――――」