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再会、そして

「ほう。噂に聞くスノーマンとは。相手にとって不足無し」


 若者は剣を抜いて、雪の精たちに対峙します……かと思えば既にそのスノーマン達の背後に立ち、剣を収めています。


「……心根の優しい精霊の類と見受けた。いや、だがしかしすまない。この国の皆の為にも私は踏み越えていかねばならぬのだ」


 若者はゆっくりと一つ頭を下げ、それを合図に雪の精たちが形作っていたスノーマンはボロボロと崩れていきました。


「む?」


 そして塔まで辿り着いた若者は、首を傾げます。


「……」


 そのまま無言で、閉ざされた塔の扉を強行突破しました。


「……やはり」


 若者の呟きは、現れた人影によって中断されます。


「あなたは……」


 冬の女王です。冬の女王は、若者の姿を認めて、やがて、彼が勇者と名乗ったことを思い出します。


 冬の女王は、若者の前にひざまずきます。


 賢明な冬の女王は分かっているのです。彼が、王様から遣わされた刺客であるのだと。


 冬が続く間、民たちが苦しんではいないかと雪の精たちに頼んで逐一様子を窺っていたのです。そして風の噂で異国から勇者を招き入れたことも知りました。


 王様としても苦渋の決断であったでしょう。そうさせてしまったことを冬の女王は悔います。


「まさか話に聞いた冬の女王が貴女であったとは」


 私のことを覚えていたのですか、と冬の女王は思わず聞き返そうとして、ぐっとこらえました。罪人となってしまった自分にとって、それは、口に出してはいけない心残りだと思ったのです。


 コツン、コツン。若者の足音がゆっくりと冬の女王様の元に近づき、やがて、止みます。


「……どうか頭をあげて下さい。冬の女王」


 その言葉に、冬の女王は驚き、顔をあげます。すると、そこにはどかりと地面に座り込み、微笑む若者の姿がありました。


「どうして……? あなたは、王に私をやっつけるように言われたのではないのですか」


「ふむ。ええそうですね。そのように言われました。あなたの命を奪ってでも、この季節の塔から排除しろと。しかし」


「何か?」


「……聞けばこの国にお触れが出されたと言うではありませんか。冬の女王と春の女王を無事に交代させたものには褒美を出すのだと。

 もはや後が無くて私を呼んだのは分かりますが、そうだとしても一度はそれに挑ませてもらうのが筋というものでしょう。私とて、国民から冬の女王を奪ったりしたくはないのです」


「……くすっ」


 冬の女王から思わず笑いが漏れます。


「よかった。あなたの笑顔の糧に少しでもなれたというのであれば私にとっては至上の喜びというもの」


 あぁ、この人は、あの冬の日に出会った勇者その人であるのだと。そう、どうしようもなく気付かされたのです。


「よければ話してください。知らない仲でもないのです。貴女の使命を曇らせる何かがあるのであれば、私はその暗雲を晴らす剣となりましょう」


 冬の女王は、しかし、ここで勇気を出せませんでした。


 若者は確かに勇者であり、自らの使命を果たすために飛び込む逞しい一面を持ったことを知りました。それに比べて自分は、在るはずもない縁を求めて季節を狂わせてしまいました。


 そんな自分が、彼に釣りあうはずもない。そう考えてしまったのです。


「しかしよかった。貴女にまた出会うことが出来て。いや、見覚えのある景色でしたからこの国のどこかには居るのであろうとは思っていましたが、まさか冬の女王であったとは」


「あなたも、私を……?」


「ええ。この辺りは春夏秋冬でぐるりと風景が変わり、生来の方向音痴もあり、勇者としての依頼もありましたので探し回る時間も多くはなく。この国からの依頼で見て回り、ようやっとあの冬に訪れたあの場所だと気付いたのです……また貴女に会えてよかった」


「わた……わた、しも……」


 冬の女王の頬に、涙が流れおちます。


「私も、あなたにまた会いたかったのです。だから、だから冬を長引かせてしまいました。そんなことは、許されるはずもないのに」


「……冬の女王、そうだったのですか」


「ごめんなさい……! 私は……わた、くしは……」


 若者は冬の女王を抱き締めます。


「冬の女王、私達がまた出会えたのは、冬が長引き、こうしてこの国に呼ばれたからです。

それが罪というのであれば、その罪は私も背負いましょう」


 冬の女王は勇者の手を取って、塔から出るのでした。



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