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異世界化した現実世界を救済します  作者: アサクラ サトシ
第二章『消失技術の記憶』
142/143

045(138) 『潜在的遺伝子(ポテンシャルジーン)』

第二章045です。

お待たせしてすみません。

 ザラが口にした言葉は、まさしく『言うは易し行うは難し』そのものだった。

 覚醒させるのは正直にいって僕らだけで行うには負担が大きすぎるしリスクも高い。

「はっきりいいます。覚醒した適正者が五人だけでは、第二次咆哮では勝ち目は薄いでしょう」

「最低でも何人必要なんだ?」

 ダリウスの低い声が部屋を満たす。

「少なくとも、あと七人は」

「俺たちを含めて十二人は必要ってことか。まるで選ばれし戦士だな」

 鼻で笑うダリウスを尻目に、僕は溜息を一つ吐いた。

「選別とは言うけれど、しかしそれはもう僕らが『Relic』に登録した時点でザラは把握しているんじゃないのか」

「そういえば、そうだよね」

 僕の質問にシルヴィアが相槌を打つ。

 全ての発端はMMORPG『Relic』だ。ザラ、つまりは白の創造主が自分の世界を守るために僕らがいる地球の人間を擬似的にそちらの世界で戦わせたことにある。そして異世界『ルーシェンヴァルラ』で戦える人間は遺伝子情報によって選別されていたはず。この時点で『覚醒因子』を持っている人間は白の創造主であるザラが把握していない、ということは有り得ない。

「ええ、把握しています。すでに遺伝子情報を提供していただいた方は、全て」

 ザラの言葉に含みがあることはありありとわかる。だからこそ理解する。

「まさか、まだ遺伝子情報を提供してない人たちから!」

 僕が叫ぶと同時に全員がザラを睨む。

「すみません。変な誤解を招いたようですね。そんなことはいたしません。すでにこちらの世界の人たちには多くの犠牲と多大なる迷惑を負わせてしまっています。これ以上、こちらの世界の人たちを巻き込もうなんて考えてはいません」

「じゃあ、なんで『選別』なんて言葉を使ったんだ?」

「ずっと考えていたことなのです。なぜこちらの星に生きている生命体にはは覚醒因子がある方と無い方がいらっしゃるのか」

 白の創造主は立ち上がり僕らの周りを歩き始めた。

「人種、地域、文化、たしかにそれは地球規模でみれば大きな違いではあるのですが、この星で生まれた生命体ならば全員に覚醒因子があってもいい。逆もまた然りです」

「それはデザインした『神』の悪戯なんじゃないのか?」

 ハインの回答に「それはありえません」と白の創造主が答える。

「ヒトゲノム解析からしてもデザイン初期段階でそのような悪戯は見受けられませんでした。おそらくはこれは長年に渡るヒトゲノムを運ぶ器の環境変化によるものだと考え至りました」

「地球の変化と共に人も……というかこの星の生命体に遺伝子変化が起きたと」

「進化と唱える方もいらっしゃるでしょう。しかし、『神』が想定したものとは別の進化がなされたと考えていただければいいでしょう。管理者がいなくなれば当然、独自の進化あるいは劣化が起こるのもまた必然です」

「それで」

 ダリウスが大きく仰け反り、白の創造主を見つめた。

「覚醒因子が有る無いの工程はわかった。だからそれがどうしたっていうんだ。なぜ覚醒因子が無い人間をまた選別するっていうんだ?」

「日本には先祖返りという言葉があります。潜伏していた遺伝子情報が何らなの拍子で表に出てくる現象と言えばわかりやすいでしょうか」

「まぁ、いいたいことはわかる。だから、それがなんだ?」

「なるほどな」

「なるほどね」

「そういうこと」

「ザラが行いたいことは潜在的に残っている覚醒因子を引き出す、ということか?」

「その通りです」

 ダリウスを除いたみんなが会話を進めていく。

「なんでお前らはそんなに察しがいいんだよ」

「なんとなく? ほら、私って日本の漫画やアニメが好きだし」

「そういう問題か?」

 シルヴィアとダリウスが揉め始めたので、とりあえず落ち着かせる。

「この話の流れだと覚醒因子がない人は潜在的にあるということで解釈していいのかい?」

 僕は話を戻してザラに聴き直す。

「そんなに簡単なことではありません。先程の先祖返りの話でいえば『何かの拍子』の準備が出来ている人でなければ意味をなしません」

「そのための『選別』というわけか」

「選別するにしてもだ。第一次咆哮で生き残った奴らが全員戦闘向けとは限らないだろう。むしろ前の咆哮時に適応者たちと戦うことすら拒否するやつだっているはずだ」

「本当に一ヶ月やそこらで間に合うのか?」

「間に合わせるしかありません。巻き込んでしまった私が言えることではありませんが。私も地球の人たちを救いたいのです」

「本当、どの口が言っているんだかって感じね」

 嫌味っぽくなく、友達にたいして意地悪をするような笑みを浮かべてイリアが手を翻してザラを人差し指でさした。

「てか、あんたらも細かいのよ。やるだけやって間に合わなかったらあたしらが戦う。もうそれでいいじゃん。そんで頑張って、足掻いて、最後を迎えたとしても、納得できる最後にしようよ」

「俺はゴメンだね。御免こうむるね」

「なによ。ダリウス。意見があるならいいなさいよ!」

「いいか、イリア。俺達は勝つんだ。そのために此処に居る」

「さっきまで家族や恋人と過ごしたいとか言っていたくせに?」

「それはそれ、これはこれだ」

「なんとまぁ都合のいいお口ですこと」

「もー、喧嘩しないでよ。なんでそんなに仲が悪いの」

 今度はシルヴィアが二人の仲介に入ると、ダリウスとイリアは揃って「こいつが悪い」と指差した。

「とにかく」

 咳払いをして今度は僕が声を上げた。

「まずは当初の目的を果たそうじゃないか。すべてはそこからだ。此処に戻ってきて色々と話をしてしまったけれど」

「そうだったな。一番肝心な奴らをわすれていた」

 事ではなく、奴らと表現したダリウスに優しさと温かみを感じる。

 そうだ。僕は彼に会いたい。

「ザラ。選別のことも、第二次咆哮のことも、新たに覚醒させなくてはいけない適正者のことも、いまは後にしよう」

「わかりました。では……場所を移しましょう」

「できればもう歩きたくはないんだけどな。いくら疲れしらすの適正者だからといって精神的には結構キてるぜ」

 久しぶりにダリウスが軽口を叩く。しかし、これに関しては僕も同意だ。

「ご心配なく。よく周りを見渡してください。ここはすでに……」

 辺りを見渡すと先程まで入り込んでいた日差しはなくなり、床も木ではなく白い床へと変わっていた。

 様変わりした部屋ではなく、別の部屋へと転送されたようだ。

「さすがは白の創造主。適正者には優しいね」

「どういたしまして」

 ザラは微笑むと、その後ろからフリージアが頭を出した。

「ようやく来たのね。待ちくたびれたわ」

 相変わらず偉そうにしているフリージアは腰に手を置いて胸を張った。

「このカプセルの中に入ってるものがなんだか、あなたたちならわかるわよね?」

 フリージアの背後には薄紫の液体が入ったカプセルがあり、液体の中で浮かぶようにして見覚えのある『それ』があった。

 右から斧、槍、杖、短剣、そして弓が入っていた。

「この弓は……」

 見間違えるはずもない。目の前にあるそのレリック武器は僕の覚醒した力を奪い、そして身代わりとなって消えてしまった人のレリック武器。

 他の四人も僕と同じように身動きすること無く、目の前にあるレリック武器を眺めていた。

「なんて……痛々しいの」

 シルヴィアの言うとおりだ。カプセルの中で浮遊するそれらのレリック武器は輝きを失い、軽く触れるだけで脆く砕け散りそうなほど無残な姿だった。

「ひとまず、五つのレリック武器から適正者を蘇らせることができるわ。さぁ、心の準備はできてる?」

 フリージアは僕ら五人の適正者を試すように口角を上げた。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

こんなにもギリギリになった言い訳をさせて頂くと、

体を壊してしまい病院のお世話になっていました。

次回、第二章最終回(予定)です。

まだ万全ではないため、次回投稿は12月中の日曜日とさせてもらいます。

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