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異世界化した現実世界を救済します  作者: アサクラ サトシ
第二章『消失技術の記憶』
140/143

043(136) 『幻影(イリュージョン)』

第二章043です。

 僕がシルヴィアに追いついたのは、ちょうどザラが扉を展開している場所だった。当然、シルヴィアだけでなくダリウスたちも集まっている。みんなが集まっている中で私的な、しかもプライベートの事を口にするのはいかがな物かと躊躇した。が、ザラを中心に集まったみんなの顔をみて様子がおかしいことに気がつく。

 遅れて集まった僕とシルヴィア以外、みな難しい顔をしている。

「なにかあったの?」

 重苦しい空気を感じ取ったシルヴィアが少し戯けた調子で話しかけるも、誰もシルヴィアに注目しない。

 彼らの視線は両目を綴じたザラに向いている。

「ダリウス。僕らが居ない間、なにがあったんだ」

「シンゴ、シルヴィアとイチャついている場合ではなかったということだ」

 ダリウスの眼差しは僕の反論を許そうとしなかった。

「ザラ。まだなのか?」

「もう少しです」

「シンゴにも教えてやってくれ。俺たちがここで死闘を行っている中、世界で何が始まりつつあるのかを」

「世界でって……まさか黒の創造主が動き出したのか?」

 第二次終末の咆哮は一ヶ月ほど先のはずだ。いや、それを反故するのも黒の創造主らしいけれど。

「俺たちもザラから話を聞いただけだ。だからこそ、こうして待っているんだよ」

「なにを?」

 ダリウスは相変わらず僕をみないまま受け答えをする。一秒と満たない間が、そのレスポンスの遅さが僕を余計に焦らす。

「おい、ダリウス」

「繋がりました」

 瞼を開いたザラが僕らに見せるようにオーブを差し出した。

「シンゴさん、シルヴィアさん。まずはこれを」

 オーブが淡く光りだすとそれは立体スクリーンとなり、青い海原が映し出された。

「海?」

「太平洋の海上です。この映像はリアルタイムで映し出しています。少し先ですね。さらに上空へ昇りましょう」

「太平洋? というか、これって誰が映しているの?」

 イリアの疑問にザラが答える。

「大陸を渡る鳥の目です。一時的ですがこの鳥の視神経と脳波を操作しています。それよりも、先程、私がお伝えした光景がそろそろ見えるはずです」

「見せてもらおうじゃないか。どんなものなのかを」

 ザインは立体スクリーンを睨みつけながら吐き捨てた。

 何も知らないままだからか、みんなの表情、その言葉からこれから何を見せられるのかを想像し想定し身構える。

 渡り鳥がさらに浮上し、それを視認した。

 立体スクリーンに映し出されたのは空に浮かぶ島だった。

 みたままを表現すれば、透明なビニールシートを無理やり押し込んだような立体感を見せている。

「ザラ、この島はいったい?」

「ムー大陸の一部です。文明の中核となる箇所を空間の狭間に押し込めたのでしょう」

「は? ムー大陸? 文明の中核を押し込む?」

「大陸は沈みましたが、その科学力は当時の賢者たちによって亜空間へと押し込めたのでしょう。いま、地球上で確認されているムー文明はほんの一部。しかも、原始的な部分しか観測れていません。ですが、ここに映し出された『コレ』は完全なるムー文明の科学力です」

「これが、黒の創造主とどんな関係が?」

「彼が、私達の前に現れた時に気づくべきでした。彼は試作型適応者を披露するために、この空間へ訪れたのではない。ましてや、シュメール文明の遺産を狙ったわけでもなかった。彼も私達とどうようにこの地で探しものをしていると思い込ませていただけ。本当の狙いはムー大陸を手に入れることだったんです」

「ムー大陸が黒の創造主の手に入ったらどうなる?」

「数日前にルーシェンヴァルラの地で暴れ狂うドラゴン以上の『なにか』がおきるでしょう」

「なにかって、なんだよ」

 ダリウスが乾いた笑い声を上げる。

「シンゴさんとシルヴィアさんがいらっしゃる前にも、言いましたが……ムー大陸の復活は現在地球文明と科学に何の影響力はありません。むしろ無害です。問題は同じ水準の科学力を用いた人間が手にいれれば、それはもう驚異でしかありません」

「なぜ、そういい切れるんだい?」

 ようやくことの深刻さが理解できた。空中に現れた天空大陸は驚くべきことではない。むしろ、宙に浮かぶその中身が問題あった。

「まるで蜃気楼のような見え方をしているな。全貌が見えるようで見えないというか」

 ダリウスの言葉は的を得ていた。ムー大陸の中核とよばれるそれは幻影のようで吹けば消え去りそうなほど存在が曖昧なように見えた。

「幻影ね」

 僕の独り言にシルヴィアが反応する。

「全くその通りね。これって実はフェイクでムー大陸を手に入れたと見せかけているだけじゃないの?」

「それはありえません。鳥の脳波からも磁場の歪み、現地球上では発することのないエネルギーを放射していることが観測できています。不幸にして幸いなのは、ムー大陸は完全なる復活を成していないこと。そして、彼自身もまだムーの中へ侵入していないことでしょう」

「どうしてそれがわかる?」

「磁場の歪みは結界が貼られている証拠です。不可侵入領域といえばいいでしょうか。どんな手段を使ったのか私にもわかりませんが。封印したムー大陸の一部を取り出すところまでは成功したけれど、完全なる封印を解除したというわけではなさそうです」

「じゃあ、俺たちが手に入れることも可能だということだな?」

 ダリウスが平手に拳を叩いた。

「その望みは限りなく低いですが、不可能ではありませんね。この結界からて完全なるムーの復活は一ヶ月はかかるはずです」

「一ヶ月……つまり、第二次終末の咆哮とあわせに来ていると?」

 黒の創造主が考えそうなことでもあった。危機的状況を創り上げた上で、僕らに試す。

 それこそゲーム感覚で人を弄ぶのを喜々としている。

「なぁ、ザラ。この現状を知った上でだ。俺たちはどうすればいいんだ? このまま指を加えて眺めているだけか?」

「そういうわけにもいきません。しかし、私たちが優先するべきことは一つです」

 ザラは立体スクリーンを消したオーブを下げる。

「失われた適正者のみなさんを復活させることです」

 急な展開、予想外の情報が出てきたけれど。

 僕らの目的はカズさんたち。

 第一次終末の咆哮で失われた仲間たちを取り戻すことだ。

最後まで読んで頂きありがとうございます。


次回は10/8日曜日です。

よろしくお願いいたします。

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