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異世界化した現実世界を救済します  作者: アサクラ サトシ
第二章『消失技術の記憶』
139/143

042(135) 『愛(ラブ)』

第二章041です。


先週中に投稿できず申し訳ありませんでした。

今後の投稿についてあとがきにて記載します。

 僕と一体化してしまったスマートフォン。いいや、もうあれはスマートフォンというよりも、異世界科学による適正者の従者、新しき妖精の形と言い換えたほうがいいだろう。

 一言『リリィ』と口にすれば、僕の目の前に現れてくれるのだろうか。

「思うだけで十分ですよ。真悟さま」

 唐突に突然に。しかし必然としてリリィは現れた。

「リリィ。なんだか、ずいぶんと久しぶりに話をしたような気がするよ」

「リリィもです。真悟さま。日本という国から離れて、二日と経っていないのに。長い長い時間が経過したようにも思えます。でも、話をしていなくとも、リリィは真悟さまがどのような思いで戦いに身を投じていたのか、ちゃんと存じ上げています」

「それは、気持ち悪い表現になるんだけれど、僕の中にいたことですべてを知っているということ?」

「平たく言ってしまえばそういうことになります」

 僕は頭を抱えた。いくら人工生命体の妖精とは言え、彼女たちはテンプレートされた人工知能ではなく完全に独立した自我を持ち合わせている。

 そんな存在に心の内を知られてしまうのは、いささか恥じらいを感じてしまう。

「真悟さま。リリィをお呼びしたご用件は、日本時間をお知りになりたいということでよろしいでしょうか?」

「まぁ、そんなところなんだけど。時間を知ったところで理子さん、えっとポニテさんがなにをしているかなんてわからないからさ」

「ポニテさまですか。覚醒されていない適正者さまたちの動向を確認することはできませんが」

「できませんが?」

「電話ならできますよ?」

 国際電話って高いんじゃないだっけ? というか、こんな空間の狭間に電波なんて通っているのか?

「さすがにここでは通話は出来かねますが、創造主さまの居住空間であれば通話は可能なはずです」

「もしかして、僕の心を読んだ?」

 本当に僕の心を読んでいるのだとしたら、ザラに申し立てをした方がいいのかもしれない。そう考えたくなるほど、小さな恐怖を感じている。

「そんなつもりは無かったのですが」

 リリィがしおらしくするので、慌ててしまう。

「リリィは悪くないさ。僕をサポートしてくれるんだから、心が読めるのは仕方のことだし、それに」

 必死になっている僕をひと目見て、リリィは口元に両手を当てて小さな両肩を上下させた。

「冗談です。真悟さま。リリィが真悟さまと身体同化をしなければ、いくらリリィでも心はお読みすることはできませんから」

 と、言ったそばからリリィは小さく笑っている。

「こいつめ」

 僕は人差し指をつかってリリィの額を押した。

「その子がシンゴの妖精ね。名前はたしか」

 僕とリリィの会話を気になったのか、シルヴィアが話しかけてきた。

「リリィといいます。今後共よろしくお願いいたします」

「ごめんね。覚えて無くて。シンゴ。ザラとフリージアが呼んでいるわ。準備が整ったからメリーランドに戻るんだって」

「わかった」

 また、後でとリリィは言い残して僕の中へ消えていった。

 どうやらダリウスは先に向かってしまったようで、僕とシルヴィア以外、周りには誰もいなかった。

「ようやく、みんなを助けることができるんだよね。復活させた後、なんて声を掛けるか決めてる?」

 僕の代わりに消えてしまったカズさんに、再び会えたら何を言うのか。正直、なにも考えてはいなかった。顔を会わせたら言いたいことを言うだけのような気もするけれど、多分、第一声はこうだろう。

「ふざけた真似してくれましたねっていうかな」

「あ、やっぱり? 私もそんな感じ。感謝の言葉は先じゃないよね。どう考えても。自己犠牲までされて生き残りたくはなかった。せめて一言でも相談してくれれば良かったのに、なんて考えちゃうんだけどさ」

 それは僕も考えた。でも……

「でも、引き止められるから言わなかったんだよね。きっと」

「止めたよ。絶対に。だから、何も言わずに自分勝手に完結させて死んでしまった。僕ら必ず、彼らを蘇らせてくれると信じて」

「どんだけ重荷になっているのか、絶対に分かってないよね」

「うん、わかってない」

 シルヴィアを救って死んでしまった人も、カズさんと同じタイプだったのかもしれない。頭は切れるのに、手前勝手で自己都合で物事を進めていく。加えてお人好しだ。

 救いようがない。

 救いようがないから、勝手に死んでしまった。

 だから、僕は蘇ったカズさんには色々と罵詈雑言を言うだろう。それでも、最後には『おかえりなさい』と言ってあげるはずだ。

「ところで、シンゴ。一つ確かめたいことがあるんだけど」

「なに? 改まって」

「シンゴの彼女はリコっていうのよね?」

「そんな話も聞いていたの?」

 僕の引き気味なリアクションを無視してシルヴィアは続けた。

「リコの事を愛しているの?」

「え、愛?」

 シルヴィアは何を聞きたいのかさっぱりわかなかった。

 いやしかし、突然、愛しているかと問われても難しい。感情としては正しいんだけど、愛なんて言葉を軽々しく言えない。

 ……ダリウスの言うとおり、僕は典型的な日本人だ。

「違うの?」

 何故か食い気味にシルヴィアが突っ込んでくる。

「違わない……けど、一体なんの話をしたいんだ?」

「簡単な話よ」

 僕よりも先に一歩前進し、そしてシルヴィアは振り返った。

「リコと勝負したいの。もちろん、二人の仲を引き裂くとかそういう汚い手は使わない。無理やりに別れさせても意味が無いから」

 本能が『破滅』のシルヴィアに言われてもなんの説得力もないのだけれど。

「いやいや、勝負ってなに? 一対一で戦うとかそういうのも無しにしてくれる? それ以前に、僕は理子さんと別れるつもりはない」

 僕はハッキリと別れないと宣言すると、シルヴィアは微笑んだ。

「それでいいのよ。でも、いつの日かシンゴを私の方へ振り向かせてみせるから。覚悟しておいてね?」

 シルヴィアは片目を閉じ、そして僕を置いて行った。

 ポーランドの人ってこと恋愛に関してはこうも積極的なのか? それとも彼女が特殊なのだろうか。

「シルヴィア、どうしてそんなに僕のことを想ってくれるんだい?」

 すでに遠くなったシルヴィアの背中に投げかける。すると、彼女はすぐさま足を止めて、振り返った。

「あなたと一緒にいて、思い知ってしまったの」

「なにを?」

「どうしようもなく、あなたのことを愛してしまったからよ。それ以上の理由なんてないわ」

 シルヴィアは言いたいことをいって、再び歩きだす。

 やっぱり彼女の本能は破滅だと思い知らされた。

 待てよ。

 あの言い分だと、シルヴィアは日本にまでついてくるのではなかろうか。理子さんとシルヴィアの対立なんて見たくないし、衝突したらしたらで無事ではすまない。

 もちろん、僕がだ。

 背中がじっとりと汗ばむ。

 僕はシルヴィアを説得するべく、彼女の元へと急いだ。


最後まで読んで頂きありがとうございます。


今後の投稿について。

これまで月初めの第一日曜日に投稿をしてきましたが、

諸事情により難しくなりそうです。

来月からは投稿確定日ではなく予定とさせて頂きます。

ですので、次回は9/3日曜日投稿予定となります。


作者都合で申し訳ありませんがご理解の程お願い致します。

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